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第91回 ─ ROSE

連載
Discographic  
公開
2009/06/24   18:00
更新
2009/06/24   18:01
ソース
『bounce』 311号(2009/6/25)
テキスト
文/一ノ木裕之、宮本英夫、ヤング係長

曽我部恵一のセンスで選ばれた、多様な作品を送り出し続けて5年。さらにその幅を広げながらも、すべてに人肌の温もりが宿っている、それこそがROSEカラー

 今年で5周年を迎えるROSE。このレーベルの歴史は、簡単に言えばオーナー・曽我部恵一の嗜好の歴史でもある。サニーデイ・サービス解散後、メジャーから2枚のソロ作を発表した彼は、ウェルメイドなポップスを作ることから自分の衝動をどう見せるか、という方向へ音楽性をシフトさせる形でROSEを始動させた。現在までにリリースされたカタログを見ると、彼自身の音楽変遷とリンクしつつもところどころにズレが表出していておもしろい。ささくれ立ったヒリヒリ感をポエトリー・スタイルのラップで表現するLANTERN PARADEに、古き良きロックンロールを披露したアニメーションズやザ・テレパシーズ。破壊的なまでの衝動を音にぶつける新鋭のワッツーシ・ゾンビや神さま――特定のジャンルなどではなく、〈自分の買い物日記みたいなレーベルにしたい〉という曽我部の皮膚感覚のみで選ばれたアーティストたちが並んでいるのだ。またそれらはどれも、どこか不器用でイビツで、愛おしくなるような要素が含まれているように思える。

 近年は曽我部自身のダンス・ミュージックへの接近も顕著なだけに、それが今後どう影響するかにも注目すべき点だ。ここでは、そんなROSEのこれまでのラインナップ(の一部)を紹介しよう。*ヤング係長

ザ・テレパシーズ 『GAMEイズOVER』 (2005)
岡山の3人組パンク・バンドが放った初作。ストレートでプリミティヴな言葉とプレイには作為がなく、地方のロック少年を純粋培養したような、キラキラした衝動に溢れている。ラモーンズよりも銀杏BOYZよりも先に、これを聴いてくれるキッズがいてほしいものだ。*ヤング

アニメーションズ 『THE ANIMATIONS』 (2005)
コテコテ、という言葉がピッタリくる大阪発のロッキン・ソウル・バンド。奇妙礼太郎のソウルフルな歌声に、ブルース・ロックを基本としつつ祭囃子からジャズの風味までをブレンドする芸達者な演奏が寄り添う。ユーモラスで、なぜか切ない後味を残すのが肝。*宮本

島津田四郎 『島津田四郎』 (2006)
〈うどんサイケ〉!?を鳴らす香川のシンガー・ソングライター。装飾は一切ナシ、ギターと声だけで構成された、生活に徹底して密着する剥き出しの歌が並ぶ。自己流の演奏と膨らんだ妄想で出来上がった孤高の音楽集といった趣だが、意外にもポップなメロディーが核に。*ヤング

曽我部恵一 『blue』 (2007)
何もかもが眩しいあの頃、あの夏を辿る10編のセンティメンタルな作品集。闇や今日を切り裂く情熱を迸らせる一方で、大事な宝物を引っ張り出すように激することなく差し出す温もりがこの身を包む。オレにとってそれは一つ一つが夢にしか見なかったあんなこと、こんなこと。*一ノ木

The COMMONS 『BRAiN DREAMS』 (2007)
結成は89年で、本作が初のアルバム! 〈下北沢の守護神〉と呼ばれている(らしい)グレイスを中心に、元KENZI & THE TRIPSや元PEALOUTら錚々たるメンバーが、熱くいかがわしく純粋で楽しいロックを追求。アウトサイダー的な凄みをこれほど感じさせる音も昨今珍しい。*宮本

THE SUZAN 『SUZAN GALAXY』 (2007)
肝の据わったガレージ娘たちの、いまのところ唯一のアルバム。パンク~ゴシックな風貌から、勢い一発の内容でしょ?と勘繰るのは早計だ。楽曲のヴァラエティーの豊富さやバランスの良い曲配置からは、バンドの知性を存分に感じることができる。海外ツアー経験もアリ。*ヤング

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