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第166回 ─ 4年間の沈黙を経て、SBKの新たなepisodeが始まる……

SBK活動休止中の4年間を振り返りつつ、ニュー・アルバムの完成裏話をメンバーが語る! その3

連載
360°
公開
2008/12/18   22:00
ソース
『bounce』 305号(2008/11/25)
テキスト
文/澤田 大輔

  「いまは〈なんでもアリ〉というか、音楽的にも文化的にも混ざったものがスタンダードになりつつある。そういう状況ならば、われわれが本分を発揮できると思ったんです」(Shigeo)。

 このたび復活を遂げたSBKにとって約5年ぶりのニュー・アルバム『RETURNS』は、彼らの本分であるミクスチャー=異ジャンル同士の交配を、2008年の感覚でもって徹底的に試みたアルバムだ。現在のエレクトロニックなダンス・ミュージックがさまざまな形態で混在し、溶け合ったトラック。その上をMCやヴォーカルが勢い良く立ち回る。カッティング・エッジでありながら、ポップスとしても成立する音楽――多くの音楽家が取り組んできたこの命題に対する最新の回答。そう言い切って良い会心作だ。

「アルバムに関して明確なヴィジョンはなかったけど、休止前の延長的なインストのアプローチはするべきじゃないなと。2MCという編成を活かすことと、ポップスとしてプレゼンできるものにすることがポイントでしたね」(Shigeo)。

 盟友Kj(Dragon Ash)とのロッキン・エレクトロ“episode V”、VERBAL(m-flo)を迎えた初期レイヴ風の“load the disc”、片瀬那奈をフィーチャーしたフレンチ・ハウス“bash”あたりに窺えるキャッチーなセンスは、SBKの真骨頂だろう。だが本作には、テック・ハウスを換骨奪胎した“cassette”や、ビートの骨組みだけで展開される“slash/slash”のような、ディープかつドープな楽曲も収められている。メジャー/アングラを問わない音のヴァリエーションを提示し、そのすべてをポップに回収する。こんな音楽が他にあるだろうか?

「普通ならいっしょにならない要素を混ぜてるし、確かに無茶してるんですよ(笑)。でも、その違和感がおもしろい。ただ、クラブの現場ではクリック・ハウスにラップのアカペラを乗っける、みたいなことはいまや普通でしょう。だからこれが新しい音だと言うつもりもないんです。やってみておもしろかったからいいのかなと」(Shigeo)。

「昔からいろんな音がごちゃ混ぜで、〈これって同じ人の曲?〉って言われるバンドだったわけで。でもアルバムを通して聴くと、ちゃんとSBKのサウンドになっている。それは今回も同じでしたね」(Shun)。
▼『RETURNS』に参加したアーティストの作品を紹介。