関西アンダーグラウンド・シーンを代表するイキのいいバンドたちが、この秋、続々と東京襲来! bounce.comでは、そのなかでも特に濃ゆ~い面々が集結した二夜をピックアップしてレポートいたします!!
夢中夢 「反復する世界の果ての夢中夢中夢中夢中夢中夢中夢中夢......∞引き裂いて」 @ 池袋・手刀 2008年10月26日(日)
SEとして流れ始めた「ファイナルファンタジー」のオープニング・テーマと共に、頭頂部にファミコン本体が固定されたヘッドギア+マントといういでたちで登場したサカモト教授。ファミコンにカセットが挿入されると、そのゲーム音楽を鍵盤で完璧に弾きこなすという芸当を飄々と披露した彼に続き、いよいよ夢中夢の6人が現れた。
新作『ilya -イリヤ-』と同タイトルのインストゥルメンタルで幕を開けたステージは、静寂を写し取ったかのように繊細なヴァイオリンが混沌に向かって徐々に加速し、フル・スピードに到達する寸前で“反復する世界の果てで白夜は散る”へとスイッチ。物語の語り部はミニマルなピアノに交代……した瞬間、ギタリスト・依田のデス声が可憐な音階を粉砕し、さらに真っ白なドレスに身を包んだヴォーカリスト・ハチスノイトのソプラノ・ヴォイスが、カオティックな音世界を救済するかのごとく崇高な美しさをもって響き渡る。ブレイクビーツとブラスト・ビートのあいだを激しく振幅しながら不穏に走るドラム、挑むように追随するベース――個々のパートが縦横無尽に交錯することで構築される荒涼とした音世界は、会場内をあっという間に覆い尽くす。
「ありがとう!」と、曲間に人懐っこく叫んだ舌の根も渇かないうちに、また凶暴なシャウトを繰り返す依田……続くは荘厳なプログレッシヴ・ゴシック・メタル“眼は神”だ。そして“僕たちの距離感”まで一気に駆け抜けた後は、幾重にも重なり合うディレイが深遠に広がる“塵にすぎない僕は塵に返る”へと、幻想世界は刻々とその表情を変化させてゆく。
メタル、ハードコア、クラシック、アンビエント、ミニマル・ミュージックなどのエッセンスが混在する小楽章で編まれた組曲のように、目まぐるしく転調しては独創的な心象風景を切り拓いていく夢中夢の楽曲。轟音のなかに浮かび上がるのは、世界の終焉と再生を思わせる壮大なスケールのダーク・ファンタジアだ。
殺伐とした幻想が渦巻く世界観を体現するプレイヤー陣のエモーショナルなパフォーマンスと、その中心でトランシーに歌い続けるハチスノイトの存在感。生身の彼らが放出するエネルギーは混沌のなかで果てしなく膨れ上がり、ラスト手前の“火焔鳥”でとうとう爆発。依田やハチスに比べてやや控えめに見えたベースの眼鏡男子、ハヤシまでもが暴れながら天井によじのぼり始め、そのままラストの“楽園”へと雪崩れ込む。観客たち(ほとんど男子)もステージ前に殺到して怒号を上げ、会場内が異様な興奮状態に上り詰めたところで本編が終了した。
アンコールは“斬鉄”……だったのだが、レポートを書くつもりで観ていたにも関わらず、意識が完全に飛んでしまったため(本編で燃え尽きていた)、正直言ってほとんど覚えていない。ただ、夢から醒めたような気分で帰路についたことだけが、妙に冴え冴えと頭に残っている。
▼夢中夢の作品