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第159回 ─ フィジェット・ハウスとは何か? ……今回はまだまだ序の口だぜ

連載
360°
公開
2008/10/16   22:00
ソース
『bounce』 303号(2008/9/25)
テキスト
文/構成/出嶌 孝次、協力/石田 靖博

 毎度お馴染みのUK音楽メディアによるハイプ……のように思える〈フィジェット・ハウス〉。〈フィジェット=ソワソワした〉という言葉のとおり、大ネタ使いに奇怪なブレイクを伴った特異な構成、エグいベースラインに跳ねるビートといった特徴を持つサウンドなのだが、極論めいた結論を先に書いてしまうと、フィジェット・ハウスとは、スウィッチことデイヴ・テイラーの主宰するダブサイデッドから続々とリリースされた奇怪ハウスのことだと言い切ってしまっても構わないだろう。

 スウィッチといえば、インクレディブル・ボンゴ・バンド“Apache”をネタ使いしたアンセム“A Bit Patchy”(2005年)で脚光を浴びた人だが、同曲の構造を思えばフィジェットの源泉も見えやすくなるかもしれない。“A Bit Patchy”以降、ファットボーイ・スリムやアンダーワールドのような大物も含む膨大なリミックスを手掛けていった彼が、M.I.A.やトリッキー、サントゴールドらのプロデュース/ミックスなどでさらなる注目を集めることとなったのは御存知のとおり。こうした繋がりを見てもわかるように(呼び方は別としても)フィジェットそのものを狭義のサウンド・フォーマットと捉えるのではなく、実際はニュー・エレクトロからグライム、ブレイクコアにマッシュアップ、クリック・ハウス、ドラムンベースまで、さまざまな地下ダンス・ミュージック水脈と共鳴しながら醸し出される〈ムード〉と捉えたほうがわかりやすいかもしれない(つまり、フィジェット以前からフィジェットな気分は存在していたということになる)。実際のところ、正面切って〈フィジェット系のクリエイター〉と呼んで差し支えない存在はダブサイデッド周辺の人脈しかいないわけだし。そんななか彼らがついにアルバム・リリースに漕ぎ着けた……。


2005年にリリースされたスウィッチのシングル“A Bit Patchy”(Dubsided/Data)