当夜のプレイバック対談! 後半戦
ITALOBOYZ (C)成瀬正規
北野 日付をまたいで、ここから後半戦ですね。自分はセカンド・フロアのイタロボーイズに行きました。途中で戦隊ヒーローもののコスプレをした人たちが登場して、適当な振り付けで踊ってたんですけど、あれはなんだったんだろう……。
澤田 彼らなりの日本のイメージですかね(笑)。僕も観てたんですけど、この時間帯のセカンド・フロアはめちゃくちゃ混んでましたね。しかも暑い!
北野 確かにギュウギュウでしたねー。この次のレックス・ザ・ドッグは入場規制で入れなかったし。犬の着ぐるみも出てきてかなり盛り上がったみたいですね。
石野卓球 (C)北岡一浩
澤田 会場であった知人もベスト・アクトって言ってましたよ。観たかったけど、僕も諦めてメイン・フロアの石野卓球に戻りました。ヒプノティックなテクノあり、ジョシュ・ウィンクの“Don't Laugh”みたいな昔の曲あり、フレンチ・ハウスもエレクトロもありと、かなり色んなタイプのトラックをかけてましたね~。エフェクターでメリハリをつけていく、いつもながらの卓球スタイルでピーク・タイムを駆け抜けてました。
北野 ここでも入場規制がかかってましたよね。
澤田 そうなんですよ。どっちのフロアも規制がかかっちゃって(笑)。
北野 今年の〈WIRE〉の盛況っぷりを物語ってますね。この頃からロビーで寝てる人も増えてきた。
ALTER EGO (C)北岡一浩
澤田 で、僕はそのままオルター・イーゴに突入しまして。いやあ最高でした。それまで上モノが地味目な曲ばっかりかかってたからか、彼らのアシッドな上モノで高揚させてく感じが気持ちよかった。時間が押してたのか、正味20分くらいのライヴでしたけど、消化不良感は一切なし。“Why Not”も“Rocker”もやってくれたし。
A GUY CALLED GERALD (C)成瀬正規
北野 そしてセカンド・フロアには、今回の個人的目玉であるガイ・コールド・ジェラルドが登場。冒頭のダビーな低音から、硬派なミニマル・テクノ、さらにブヨブヨのアシッド音まで、結構いろいろな音を出してましたね。
澤田 彼が在籍していた時代の808ステイトとか、初期のデトロイト・テクノに通じる簡素で未完成な魅力たっぷりのステージングで。そこがフレッシュで良かったですねえ。
北野 最後の曲を高速回転させて、子供みたいに跳ねてるのが超オチャメでした(笑)。で、ガイを観て気が抜けたのか、この後3階席で眠りの世界に誘われまして……。
BURGER/VOIGT (C)成瀬正規
澤田 仮眠タイムに入りましたか。僕はご飯を食べたりしつつ、〈KONPAKT〉の首脳コンビによるブルガー/フォイトを観ました。ふたりともすんごいニコニコしてたのがとにかく印象的だった(笑)。上モノの手触りがテクノ・ポップっぽいキャッチーなトラックを連発して、ラストはクラフトワーク“The Model”のカヴァー。いやあ、ハッピーなライヴでした。……北野さんはまだお休み中?
北野 ええ、気づいたら5時で、係員の人に「3階席を閉じます」って起こされた(笑)。おかげで大トリのリカルド・ヴィラロボスが観れたんですけどね(笑)。
澤田 いいモーニング・コールでしたね! そういえば、リカルドの前が田中フミヤでしたけど、最後にリカルドの“Enfants”をかけてましたね。
北野 粋なバトンタッチだなあと思いましたよ。今回の〈WIRE〉でそういうシーンってあんまりなかったですもんね。
RICARDO VILLALOBOS (C)北岡一浩
澤田 ですね~。そしてここから終演まで、リカルドによる2時間のロング・ジャーニーでしたが。
北野 〈WIRE〉のトリってもっとハードなイメージがあったので、どうなのかなあと思ってたんですが、みんな結構激しく踊ってましたね。
澤田 そうですね。まあ、彼の“Fizheuer Zieheuer”に象徴されるようなド変態プレイというわけでもなかったし、上手いこと盛り上げてましたよね。初期トランスのクラシック“Age Of Love”をかけたり、風変わりなネタを挟み込んでアクセントを付けていた。でも最も印象に残ったのは、リカルド本人のクネクネしたアクションですかね(笑)。
北野 終盤の投げキッス連発とか(笑)。でも2時間を飽きさせずに聴かせてくれましたね。で、アンコールはリル・ルイスの“French Kiss”にデリック・メイの“Kaotic Harmony”だったんで、意外とまっとうな路線も歩んでるだなあって、変に感心してしまいました。
澤田 リル・ルイスの“French Kiss”は、今回の〈WIRE〉で一番多く聴いた曲なんですよね。ミシェル・デ・ヘイもかけてたし、3~4回は耳にしたなあ。
北野 20年前の曲が今年のアンセム(笑)。なんでですかねえ。
澤田 あの曲のミニマル感とハウスのグルーヴは、最近のシーンの傾向に繋がるところがあるってことですかね。テクノとハウスのどっちにも接続できる感じというか。
北野 それはあるかもですね。いやあ、という感じで二人とも無事完走しました。全体を通しての感想ってありますか?
澤田 総括する話じゃあ全然ないんですけど、電気グルーヴ『J-POP』のTシャツをみんな着てたじゃないですか。テクノでガンガンに踊ってるんだけど……。
北野 胸には〈J-POP〉とだけ書いてある(笑)。あれは妙な感じで面白かったですね。
澤田 それが今年の〈WIRE〉を代表する光景だったかな、と(笑)。
▼文中で紹介した出演アーティストの作品を紹介