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第84回 ─ プレッシャー

プレッシャー発のド渋なルーツ・ロック・レゲエ/ダブ音源を、dj KENTAROがフレッシュにミックス!

連載
Discographic  
公開
2008/09/04   00:00
更新
2008/09/26   19:10
ソース
『bounce』 302号(2008/8/25)
テキスト
文/山西 絵美


  こんなページを作っておいて何だが、プレッシャー作品はマニアックに思われているような気がする。同レーベルの発掘品に日夜手を合わせているコアな愛好家が存在する一方で、だからこそビギナーは敬遠しがちというか、手を出しづらくなってしまうこともあるのだろう。そういった意味で、dj KENTAROがプレッシャーのミックスCDを手掛けることは非常に有意義だと思えてならない。

「昔の音源を再発するって物凄くポジティヴなことですよね。プレッシャーがなかったら、こんなに良い曲だって誰にも聴かれないまま終わったかもしれないし。陽の目を見ることのできなかったレコードを表舞台に引き上げて、みんながまた流しはじめるって凄くないですか?」。

 長い時を経て世に出された楽曲が、人気・実力共に世界最高峰を誇るターンテーブリストの手によってさらにフレッシュに生まれ変わる――この『Pressure Sounds presents TUFF CUTS dj KENTARO Crucial Mix』には、そんな壮大なロマンが詰まっている。

「ドーン・ペン“No, No, No”のネタにもなったプリンス・ファーライ“Hello Love Brother”もそうだけど序盤でまず掴みを用意して、中盤でド渋なダブ・ゾーンに突入。で、そこを抜けると歌モノがあって……みたいな構成は考えましたね。早い段階からインスト・ダブを多く入れようと決めてたけど、それもそういう流れのなかで聴かせたいなって」。

KENTAROのイメージに反して、本作でのスクラッチやジャグリングは控えめだ。それはまるで〈上質なサウンドをじっくりと堪能してほしい〉という彼の気持ちが滲み出ているようにも受け取れ、そんな原曲に対する真摯な姿勢にコアなレゲエ・リスナーは思わずニヤリとしてしまうことだろう。と同時に、聴き心地を意識した全体の流れ然り、自身のアルバム『ENTER』に収録された“Trust”のサンプリング・ネタであるレヴォリューショナリーズ“Beware”使い然り、従来のKENTAROファンも大満足できる仕上がりとなっている。

「レゲエにドップリな人はもちろん、そうでない人にも楽しんでほしいですね。大地っぽい感じとか、男らしさとか、そういうレゲエの持つタフな部分に触れてもらえたら嬉しいです」。

 免疫のない人は覚悟を決めて〈TUFF CUTS〉に臨まなくてはならない。なぜならこれを機にヴィンテージ・レゲエの入口に足を踏み入れたが最後、そこには出口のないタフな世界があなたを待ち受けているのだから。

▼dj KENTAROの作品を紹介。

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