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第84回 ─ プレッシャー

連載
Discographic  
公開
2008/09/04   00:00
更新
2008/09/26   19:10
ソース
『bounce』 302号(2008/8/25)
テキスト
文/鈴木 智彦、山西 絵美

歴史のなかに埋もれた良質なヴィンテージ・レゲエを発掘し続けるUKの名門レーベル、プレッシャーの扉を叩け!!

 70年代に生まれたルーツ・ロック・レゲエのお宝音源を〈丁寧かつ愛情と思い入れたっぷり〉に発掘し続けるUKのインディペンデントなリイシュー・レーベル、プレッシャー。エイドリアン・シャーウッド主宰のON-Uよりリリース経験のあるロンドン・アンダーグラウンドのヴォーカリスト、ピート・ホールズワースが95年に立ち上げた同レーベルからは、(2008年現在で)すでに50枚を超えるアルバムが世に送り出されている。プレッシャー発のリイシュー作品は、ハードコアでシリアスなメッセージ性と、ダブの手法を採り入れた(いまの耳で聴いても)革新的で先鋭的なサウンド・プロダクションを湛えたものばかり。80年代以降にUKの地で独自の展開~発展を遂げてきたルーツ・レゲエ・カルチャーとダンスホール・カルチャーの融合文化=ニュー・ルーツとも深い部分でシンクロし続けてきたと思われるレーベルの活動が、スタートから10数年を経てもなお力強く継続されているという点に、かの地におけるレゲエ文化の受容のされ方のハンパなさを感じることもできるだろう。

 また、その活動は過去の音源発掘だけに留まらない。97年にサブ・レーベルのグリーン・ティーを設立し、そこからDRY&HEA-VY作品をUKにおいて紹介するなど、ルーツ・レゲエ・カルチャーの世界的規模での流布と受容、そして発展に対してアンテナを張り巡らせている点も特記しておこう。
(鈴木智彦)

AUGUSTUS PABLO 『El Rocker's』 
キング・タビーとの共同作業による骨太でソリッドでドンシャリ感たっぷりなサウンドのなかを、ゆらゆらと漂う哀愁のメロディカ・プレイ。ワン&オンリーな輝きを放つパブロとタビーが70年代中期に録音したコラボ音源集にして、インスト・ダブのマスターピース。
(鈴木)

BURNING SPEAR 『Spear Burning』  
マーカス・ガーヴェイと同じセントアン出身、〈ラスタ・プロヴァガンダ・マシーン〉の異名も持つウィンストン・ロドニーa.k.a.バーニング・スピアが、みずからのレーベルを立ち上げて制作した70年代中期の作品群をコンパイル。ルーツ・レゲエとダブのもっともハードコアな部分が凝縮!
(鈴木)

PRINCE FAR I 『Psalms For I』(1975)
〈ヴォイス・オブ・サンダー〉との呼び名でも知られるダミ声DJの元祖がブラック・アークで吹き込んだ初作は、旧約聖書の詩編〈Psalm〉を朗読したもの。スピリチュアルなトースティングとアグロヴェイターズによる重心低すぎな演奏が強烈で、ダブ・ポエットのような趣もアリ。
(山西)

DENNIS BOVELL 『Decibel:More Cuts And Dubs 1976-1983』 
UKレゲエ/ダブを、本場ジャマイカ産のそれと比べても遜色のないレヴェル(あるいはそれ以上!)にまで引き上げた最大の功労者による76~83年のワークスをコンパイル。彼自身が奏でるベースの躍動感を活かしたプロダクションも素晴らしい!
(鈴木)

THE WAILING SOUL 『The Wailing Souls At Channel One』 
革新的なリズム、美しいヴォーカル、12インチ・シングルという先進的なフォーマットで展開された長尺のダブ・ミックス──それぞれの魅力を味わい尽くせる、ルーツ・レゲエ絶頂期を支えたチャンピオン・サウンドのチャンネル・ワンに残された好盤だ。
(鈴木)

THE TRAVELLERS 『Black Black Minds』(1977)
キング・ジャミーがブラック・ウフルと同時期に手掛けたヴォーカル・グループの唯一作で、2005年にジャミーズ自身がマスターを発掘したことで晴れて陽の目を見たという一枚。息を呑むほど素晴らしいハーモニーと、合間に飛び出すソリッドなダブの対比が危険!
(山西)