こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

NEWS & COLUMN ニュース/記事

第5回 ─ 〈フジロック〉復習編 Part.2 各アクトの詳細をレポート!

連載
オレら の 夏 フェス 予習・復習帳 '08
公開
2008/08/07   14:00
更新
2008/08/22   18:32
テキスト
文/ダイサク・ジョビン、山西 絵美、加藤 直子、土田 真弓、澤田 大輔

延べ11万9000人のオーディエンスが集結した元祖ロック・フェス〈FUJI ROCK FESTIVAL〉の復習編第2弾! 参加者4名の総括座談会をお届けした第1弾に続いて、今回は各アクトを詳細にレポートいたします!

7月25日(金)

11:30~
■MIDNIGHT JUGGERNAUTS @ RED MARQUEE

深夜の〈RED MARQUEE〉が似合いそうなダンス系アクトが、初日の午前中にいきなり登場。この時間帯じゃあ厳しいのでは……と思ったものの、いざ音が鳴り出せば、朝から踊りたい好事家たちがワラワラと集結して来た。〈ジャスティスのお気に入りバンド〉なんてフレーズが先行していたこともあり、クールでスタイリッシュなイメージを彼らに抱いていたのだけど、実際にステージに立っているのは、若干ムサいヒゲ面3人衆。ヴォーカルはエアロビのインストラクターみたいな格好だし、ベース&ドラムはエネルギッシュに弾きまくってるし、見てくれは微妙にどん臭い。だが、なりふり構わずにキラッキラのサウンドを奏でている感じが、微笑ましくも胸を打つ。エレポップ直系の官能的なシンセ・ベースがフロアを揺らし、プログレッシヴ・ハウスばりに壮大なメロディーがオーディエンスを高揚させ続けた45分。空になったビール缶を掲げてメンバーを送り出し、ふと振り返ると〈RED MARQUEE〉はいつの間にやら満員御礼。いやあ、なかなか景気良く初日のスタートを切らせていただきました。*澤田

16:30~
■JASON FALKNER @ FIELD OF HEAVEN

〈Mr.パワー・ポップ〉ことジェイソンが登場する頃には、昼過ぎから降り出していた雨も上がり始めていた。朝からダンス系アクトやDJばかり観てきたからか、ストレートなロック編成で奏でられるソリッドなサウンドが、やたらフレッシュに耳に飛び込んでくる。そして、なによりもドリーミーなメロディーがダイレクトに胸を締め付ける。ジェイソンは「今日のオーディエンスは静かでラヴリーだね」なんて話していたけど、彼のライヴは大騒ぎするよりも、拳を挙げつつうっとりと聴き惚れる感じなのだ。中盤では、ロジャー・マニングJr.らとのユニット=TVアイズのナンバー“Stop Me”なども披露。さらにラストの2曲では、なんとくるりの岸田繁&佐藤征史を迎えての超豪華セッションが実現! ジェイソン・ファンを自認する二人は、中学生のギター・キッズのような笑顔を見せながら本当に楽しそうにプレイ。そんな様子を前に盛り上がりまくるオーディエンス。特に、オーラスに繰り出された名曲“Miss Understanding”は個人的にも燃えました。*澤田

17:20~
■OZOMATLI @ ORANGE COURT

チカーノ系ミュージシャンを中心とするLA発の多国籍ミクスチャー・バンドが、ワールド・ミュージック御用達の〈ORANGE COURT〉に登場。ヒップホップ~クンビア~レゲエ、なんでもござれ。誰もが飛び込める湯船のようなグルーヴを噴射し、オーディエンスは横に縦にと揺れまくり。メンバーも、グルーヴをパーフェクトにキープしながら随所でダンスを決めまくり。息をつく暇もなく、次から次へと繰り広げられるファンキー・エンターテイメント……凄すぎる。ステージもフロアも、音楽を全身で受け止め、とことん楽しもうとしている感じが気持ちいい。パーカッション担当が、次から次へとスティックを放り投げながらビートを繰り出し続けているのも、意味はよくわからないが衝撃的だ。ステージの持ち時間を使い果たしても彼らは飽きたらず、メンバーがそれぞれ太鼓を抱えて客席に乱入。オーディエンスと共に祭りビートを打ち鳴らし、エンドレスに盛り上がってました。最高! *澤田

20:00~
■sleepy.ab @ GYPSY AVALON

周囲は森。そのさらに外側を覆うのは宵の闇。七色の布が虹を描くように飾り付けられ、青や紫の光でライトアップされた〈GYPSY AVALON〉は、どこかファンタジックな趣きだ。集まった観客たちがステージ前の芝生の上で体育座りをして待っていると、メンバーが登場。“メロディ”の浮遊感溢れるディストーション・ギターと大らかなメロディーが、木々の隙間を浮遊し始める。彼らのパフォーマンスは今回初体験だったのだが、椅子に座ったままでエフェクターを駆使するギタリスト・山内の姿にまず目を惹かれる。時には激しく、時には幽玄に――シューゲイザーともエレクトロニカとも言える繊細な音色を響かせるギターは、美しい残像を揺らめかせながら、木立が形作るナチュラルな密室空間のなかをたゆたい続ける。そこに明度の高い成山の歌声と、タフなリズム隊が溶け込んで――そうして現出するリリカルな音世界は、会場を包み込む幻想的な雰囲気と相まって、音源以上にググーッと胸に迫ってくる。特にラストで奏でられた“ねむろ”では、染み入るようなノスタルジアに記憶の底が刺激されて、不覚にも涙ぐんでしまった。ふと見上げれば、雨上がりの夜空から降り注ぐ控え目な星の光。ほんのりとした幸福感がいつまでも残る、いいステージだった。*土田

21:00~
■SPECIAL OTHERS @ FIELD OF HEAVEN

出番数時間前に行った取材で「マイブラの裏でやるってどうなの?」というごく雑談レヴェルな問いに「そりゃイタイっすよ~」と本音もポロリしていた彼ら。直前のスケジュール変更で奇しくも初日の(本人たちいわく)〈ゴールデン・タイム〉に抜擢されたわけですが、その特等席に足るとっても気持ちの良いステージを目撃できました! このバンドのライヴは「ウォーッ!」という興奮を促されて楽しむというより、集まった人自身が心のスイッチをポチッと押して魂を解放し、ステージ上のメンバーと同調できるか否かで楽しめるかどうかが決まるんじゃないかと思うのですが、3曲目(あたりの)“STARS”からようやくオーディエンスみんなの気分がスイッチ・オンされ、〈これが味わえればとりあえず文句なし〉な心地良くアガッていくモードへ突入! 四つ打ちドラムで完全に踊らされる“IDOL”~“GOOD MORNING”では、それはもう天にも昇るような気分で、辺りはすっかり縦横に揺れまくりです。後半に差し掛かって最新作『QUEST』からの人気曲“Laurentech”やみんなお待ちかねの“AIMS”では、女の子というより汗臭そうな男子勢(ごめんなさい)が円陣を組んでグルングルン回りながらヤンヤしていたりなどラヴ&ピースな光景がそこかしこで見られ、見事昇天! ライヴ後にはギャルズが小走りで「いままででいちばん良かったねー! ヤバーイ!!……っていうかなんで走ってんのー!?」と言いながらそばを過ぎて行ったけれど、このように興奮冷めやらずつい走り出してしまうほどメンバーとオーディエンスが溶け合った親密感たっぷりのステージは、まさに〈ゴールデン〉なひとときだったのです。*加藤

21:10~
■BOOTSY COLLINS @ WHITE STAGE

  巨大フェスのいちラインナップであるにも関わらず、USで行われているジェイムズ・ブラウンのトリビュート・ツアーをそのまま苗場に持ち込んでしまったファンク御一行様。開演直前に「今夜のショウは三部構成です」と明かされた時点で長丁場になることは予想していたけど、まさか3時間近くも〈WHITE STAGE〉を占拠しちゃうとは……その絶倫ぶりには正直たまげたね。ざっと説明すると、第一部はパブリック・エナミーのバックなどで活動していたベーシスト率いるバンドが務め、第二部はJB’sのフレッド・ウェズリーが自身のバンドを従えて登場(彼のトロンボーン・ソロを夜空の下で聴けただけで、マイブラへの後ろめたさは完全に消失!)。そして、いよいよトリでブーツィー・バンドが降臨するのである。ただし、この日のブーツィーはステージ後方で黙々とベースを弾くことに集中し、想像していたより衣装も地味め。でもそこに御大へのどデカイ愛情を見た気がして、思わず天を仰いでしまったのは私だけでないはずだ。フロントはJBのソックリさんと、女性シンガー(後から調べたら、なんとヴィッキー・アンダーソンだった!)が担当。お約束のマント・パフォーマンスやJBの前妻の飛び入り参加など、ショウ自体の時間は長かろうとも飽きさせない仕掛けを挿入し、最後はブーツィーがマイクを握った“We Want The Funk”で大団円。その結果、腰はガクガクなのに「もっとファンクが欲しい~」と叫ばずにはいられない始末に陥ったことは言うまでもない。できれば朝までファンク汁にまみれたかったよ。*山西

21:30~
■MY BLOODY VALENTINE @ GREEN STAGE

  目の前に本当にメンバー4人が登場して演奏をスタートしただけで、リアルタイムで熱狂した世代としては感動&涙。異形の名盤『Loveless』のイジリすぎて何がなんだかわからんくなった混沌サウンドをどうライヴで再現するのか?というのが個人的な注目点だったが、(実際に複数のエフェクターを駆使しまくって)意外と音源に近い音を生演奏で出していたので、その事実だけでまた感動&涙。1曲ごとにフロンマンであるブリンダ・ブッチャーとケヴィン・シールズはチューニングの違うギターに持ち替え(ヴィンテージでルックスもいいギターばかりなのでその〈苗場ギターコレクション〉だけでも感動&涙)、背後霊のように生気なく棒立ち&無表情なまま、アームを持ったままストロークを繰り返す右手だけが激しく動いている(そのバックでベース&ドラマーがハードコアに激しく動き回っている)といった風変わりなステージ・アクション(?)もストレンジすぎ&彼ららしくて感動&涙(46歳とは思えないブリンダの浮世離れした美しさにずうっと見惚れていました)。ラスト近くでの20分、ワンコードでひたすら凶暴な爆音ノイズを放ち続けるといったプレイも圧巻で、〈GREEN STAGE〉という広大な空間であれだけの大ヴォリュームで彼らの出す音を(身体全体で)聴くという体験、というのがまさしく新たな伝説となったのは間違いないでしょう。*ジョビン

24:00~
■電気グルーヴ @ オールナイトフジ

  電気グルーヴ×オールナイトフジという夢の組み合わせが実現してしまったわけで、〈ORANGE COURT〉は当然のごとく超満員。のっけから入場規制がかかるなか、“ズーディザイア”のアーリー90'sな電子音が響き渡り、苗場レイヴは早くもピークへ突入する。この日の電気は、ステージ前方に瀧、後方のブースに卓球&KAGAMIという布陣。“モノノケダンス”での卓球のハイトーン・ヴォーカルに、“あすなろサンシャイン”での瀧のオペラ・ヴォーカルに、喜び全開の歓声があちこちから沸き上がる。“かっこいいジャンパー”では瀧がサイバーな電飾スーツに衣替え。クールなダンサー二人を従えると、なんと一糸乱れぬ完璧なロボット・ダンスを披露してみせたのであった……テクノ過ぎ! そして、続けざまに投入された“FLASHBACK DISCO”がテンションをさらに増幅させたところで、“虹”のメランコリックなメロディーが降り注ぐ。バレアリックなシーケンスに身を任せ、夜空を仰ぐオーディエンス。だが、オーラスに繰り出された“カフェ・ド・鬼”が、昇天しかけたフロアを一気に現実へと引き戻すのであった。ちなみに、ここでの瀧は、鬼束ちひろのグッズと思しき〈鬼Tシャツ〉を着て登場。背中に刻まれた、どデカい〈鬼〉の一文字をこれ見よがしに誇示していた。微妙なツボを付く最後の小技に、電気の真髄を感じた次第。*澤田

24:00~
■DJ MEHDI、DAN LE SAC VS SCROOBIUS PIP、GRANDMASTER FLASH、Shing02、1945 a.k.a KURANAKA @ PLANET GROOVE

  〈PLANET GROOVE〉と名付けられた1日目深夜の〈RED MARQUEE〉。会場に入ってまず目に飛び込んできたのは、ステージに上げられて踊り狂う多数のギャルと、その真ん中で大ハシャギしているDJメディの姿。怪しくてちょっぴりエロい〈フジロック〉の夜の一面が、徐々に顔を覗かせていく。ヒップホップ濃度の高めなエレクトロ・ディスコでメディがフロアを温めたところで、ダン・ル・サックVSスクールビアス・ヒップへとバトンタッチ。お待ちかねの“Thou Shalt Always Kill”ではマイブラやカサビアンなど今年の参加メンツを〈Just A Band〉と切り捨て、クラウドの心を鷲掴みにした。お次のグランドマスター・フラッシュは、ランDMC“Walk This Way”やニルヴァーナのアレなど大ネタを連発。繋ぎのたびに歓声が上がるという事態に〈ちょっと迎合しすぎのセレクトなのでは?〉とか思いつつ、どんなに身構えていてもこちらの理性を奪い取っていく百戦錬磨の力技に平伏すしかないわけで。そんなレジェンドにすっかり一枚喰わされたところで、Shing02が登場。ヴァイオリンやキーボードを従えてひとつひとつ大事に言葉を紡いでいく姿があまりにストイックに見えたのは、グランドマスター御大の後だったから……だけではないはずだ。Shingoが締めの一曲“400”を終えた頃にはすっかり空も明るくなりはじめてきた。でも、会場には1945 a.k.a. KURANAKAのスモーキーなダブが間髪入れずに鳴り響く。一晩でいろんな〈宇宙のグルーヴ〉を体験してしまった。*山西

▼文中に登場したアーティストの作品を紹介