ゆらり途中下車の旅
ゆらゆら帝国というバンド名は、もしかしたらこの作品のために付けられたんじゃないかと思ってしまいました。無機質なタイトルとは裏腹にゆらゆら蠢くリミックス集『REMIX 2005-2008』をぼんやり聴いていると、だつりょくのむこうがわのぬるくてふるちんでぬめるきもちいいきもちよさが……と、漢字を使うのもだるくなるほどの心地良さが、回る回る。ら行の境界がゆらりと溶けて、ゆるゆる帝国へと迷い込んだような気分になるのです。
きっかけは当然ありました。2005年の『Sweet Spot』からシングル・カットされた12インチ“ソフトに死んでいる”が、主にオルタナ・ハウス~ディスコ・ダブと無意識に脈を通じる形で従来のリスナー以外からも注目を集め、高橋透やムードマン、瀧見憲司といったDJたちに支持されたのです。それ以降、彼らの12インチは着々と帝国の住人を増やしていきました。そして、それ自体がソフト・サイケ・がらんどうAORとでも呼びたいダンス(?)空間と化した昨年の怪物『空洞です』は、クラブ専門誌などで絶賛されたのも納得の、〈その先〉へと船首を向けた内容となっていたわけですね。
で、今回の『REMIX 2005-2008』は、先述の12インチ群からのトラックに、新たな未発リミックスを6曲も加えた贅沢な2枚組。そこにあるのはバレアリックやプログレ・ディスコやサイケやスロウ・トランスやアンビエントやクラウトや何やの記号で形容されながらも、明確に解釈しようとするとでっかいクエスチョンマークしか見えなくなるような、2008年のダンス(?)空間そのものであります。それは下で紹介している古今東西の作品たちの、いまの楽しまれ方とも共振する、時代のグルーヴとして浴びるべきもの。それでは、つぎの夜、ゆるゆる帝国でお会いしましょう。
▼ゆらゆら帝国の近作を紹介。
▼ゆらゆらしたミックスCDを紹介。