今月のスナップ……ではなく、スチャダラのライヴ会場でのファッション・スナップに取り上げられた上野氏19歳。
ブロンクス あと、これも言っておかなきゃいけない。当時はANIのラップはマジでヤバいって言われてた。「Fine」誌の〈好きなラッパー・ランキング〉で2位に入ってたし。
上野 いま思うとすげえ不思議なランキングだったよね(笑)。フリーキー・フロウってところで評価されてたんだろうね。
ブロンクス ANIは日本でも屈指のスペル・バウンド*5野郎だった。「A to the NI お静かに」とか「いーな、いーな、I.N.A逆にANI」とか。
*5 単語をアルファベットに分解してライムする技法。
上野 「A to the NI」はやられたな(笑)。
ブロンクス オリーブ少女はBOSEファンで……。
上野 B-BOYはANI、みたいな。顔もいいですよね。B-BOY面って言うか(笑)。
ブロンクス 上ちょはLB系の先輩達にも可愛がられてるよね。後継者でしょ、毎回言ってるけど(笑)。
上野 まあスチャダラと違うのは、俺らは女の子の客が一向に増えないっていう。これは深刻な問題ですよ。
ブロンクス オリーブ少女はどこいったんだろうね。
上野 まあそういう人にたまに好かれたりもするんすけど……。前に付き合ってた人もそういう、年上でスチャダラ好きでかわいいもの好き、みたいな。
ブロンクス 別にオリーブに親近感があったわけじゃないんだよ。ただ、ソウルセットとかフィッシュマンズとか、真心(ブラザーズ)とか、ヒップホップ以外で聴くものが、そういう人たちと被ってるんだよね。
上野 そうっすね。やっぱフィッシュマンズとか聴いてる女と遊んでたからなあ。
ブロンクス そういう人達って渋谷系と言いつつ、遊びに行くのは下北なんだよね。スリッツとか。
上野 そうっすねえ。ヒップホップっていうよりサブカル的なコミュニティーだった。
ブロンクス 渋谷系で一番売れてたオザケンの『LIFE』でも100万枚行くか行かないかくらいでしょう。当時は500万枚とかのCDセールスがあった時代で、そう考えると渋谷系も絶対サブ・カルチャーだよね。あ、重要な事を忘れてた! この頃のスチャダラは3人で歌詞書いてたんだよね。
上野 そういうやり方は他にないっすよね。だから相当洗練されてるし、ハンパなく作りこまれてる。リリックのテーマとかも全然ぶれないし。
ブロンクス コンセプトを立てて曲を作るってところは本当にずば抜けてるよね。このアルバムはヒップホップ的にも、スチャダラの中でも、すごい普遍的な作品なのは間違いないよね。
上野 いまでも全然聴いてる。“サマージャム'95”を聴かない夏はないからね。
ブロンクス ただ、〈“サマージャム'95”が入ってるアルバム〉って片付けられちゃうのは違うよね。
上野 そうだね。もっと色んな要素が入った、バランスのいいアルバム。あと、普遍的過ぎて言うことがないってのもあるよね。ユウさんの『THE SOUNDTRACK '96』とかライムスの『EGOTOPIA』とかはその時代の空気をすごい感じさせるアルバムじゃないですか。
ブロンクス 確かに。常に聴いてきたから特にこの頃の記憶と結びついてないかもしれない。
上野 ただ良く聴くアルバムとして存在してるっていう。普通の人にとってのサザンの曲とかに近いかも。
ブロンクス スチャダラが一番バランス感覚が良かった時期の一枚ってことだね。他のラッパーが乗りたくても乗れない時代の波に乗っかってたし。
上野 かつ、手のひらで時代を転がしてる感じがした。
ブロンクス ……まとまんないねえ(笑)? じゃあ最後は無理やりリリック大喜利で締めようか。「結局 南極 今日は」?
上野 「連想不足……」。これ失礼じゃない? いや好き過ぎてって意味でね……。
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