宇宙の果てより、海の底より、もっとディープな地点で轟音を響かせる地下の音楽。凶悪なベースがフロアを這いずり回って全身を噛み砕き、ドープなブレイクビーツが脳髄に撃ち込まれる……いよいよ地上へも姿を現しはじめた危険極まりないサウンドを、旬のうちに味わってみよう
ブリアルのニュー・アルバム『Untrue』などの注目作が連発され、ここにきて注目度を増しているのがダブ・ステップだ。南ロンドンのクロイドンで生まれたとされるダブ・ステップは、2000年頃にゼッド・バイアスやエル・B、ホースパワーらが生み出したUKガラージのダークサイドをそもそものルーツとしている。複雑なドラム・パターンと重厚なサブベース、マイナー・コードのメロディーで構築された、中毒性のあるダークでメランコリックなサウンドは、2003~4年あたりから徐々にシーンへと浸透。2005年にクラシックとなるスクリームの“Midnight Request Line”が登場すると、シーンの勢いは一気に加速し、テンパやハイパーダブ、テクトニックのようなレーベルから入手しやすいCD作品が次々に登場したこともその動きに拍車を掛けた。以降も、ブリストル・シーンを牽引するピンチや、シャックルトン&アップルブリムなどシーンの外まで話題を広げるような顔ぶれの作品を続々と輩出して現在に至る。音楽的にも成熟を深めるダブ・ステップの大爆発はまだこれからだ!
(青木正之)