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第1回 ─ 〈FUJI ROCK FESTIVAL '07〉予習ディスク・ガイド

第1回 ─ 〈FUJI ROCK FESTIVAL '07〉予習ディスク・ガイド(3)

連載
オレらの 夏 フェス 予習・復習帳 07
公開
2007/07/19   18:00
テキスト
文/bounce.com編集部

7月29日(日)に出演するアーティストの作品を紹介

 最終日のヘッドライナーは、クラブ・ミュージック界を代表するヒーロー、ケミカル・ブラザーズ。そのほか、壮大なマジカル・ポップを聞かせる新鋭ミーカ、若きソウル・ディーヴァ、ジョス・ストーンらが並ぶ〈GREEN STAGE〉には、ワールド・ワイドな活躍を見せる国産エンターテイメント・ジャズ集団、SOIL & "PIMP"SESSIONSも名を連ねております。また、愛すべきロックンロールおやじ、ジョナサン・リッチマンが前日に続いて登場。しかもこの日は2つのステージをこなしますよ!

THE CHEMICAL BROTHERS
『WE ARE THE NIGHT』
Virgin(2007)
いわゆるニュー・レイヴ周縁の連中が次々と台頭するなか、いつの間にかその元祖的な存在としての認識も得てしまい、何度目かの脚光を浴びているケミカル兄弟。この新作は何と6枚目のオリジナル・アルバムとなり、栄枯盛衰の激しいクラブ・シーンで10年以上に渡ってトップ・クラスの人気を保ち続けているというのは、これはもう驚異的なことであります。そんな彼らの魅力はやはりエッジの立ったビートにあるわけですが、シングル・カットされた“Do It Again”を聴くとエレクトロっぽい感じでベースをブリブリいわせていたり、今回もインパクトはバッチリ。時代の流れにノリつつ、独自色を濃く打ち出していくやり方は流石です。クラクソンズの旬なゲスト参加も恐ろしく抜け目ない! まだまだフレッシュです。(池田 謙司/bounce 2007年07月号掲載)

JOSS STONE
『Introducing Joss Stone』
Virgin(2007)
通算3作目にして〈私を紹介します〉ときた。前作『Mind, Body & Soul』が初のオリジナル・アルバムとなったジョス・ストーンだが、今作では全曲の歌詞を自分で書き、20歳を目前にようやく等身大を表現できたのだという。プロデュースはラファエル・サディーク。ソウルに無上の愛を注ぐ両者が結び付けば生まれるのは当然〈ソウル〉で、従来どおり管弦も導入した生演奏をバックに、モータウン~70'sソウル的なフレイヴァーも交えつつジョスは力むことなく歌のストーリーを伝えていく。いくつかの楽曲は、ソウル偉人たちの血筋を引きながら革新を厭わない元ロウカスの精鋭=ノヴェルとの共作で、“Tell Me What We're Gonna Do Now”ではコモンを迎え、“Music”ではローリン・ヒル(!)を引っ張り出して……と、組むべくして組んだようなヒップな共演も実現。独創性を持って挑んだ新たなソウル・セッションズは自信に満ち溢れている。(林 剛/bounce 2007年04月号掲載)

BATTLES
『Mirrored』
WARP(2007)
3枚のEPにて僕らの脳天を鈍器のような音の塊でぶっ飛ばし、ロックの未知なる領域を見せてくれた激テク・インスト・マス・ロック・バンドが初アルバムを投下した! 鏡と鏡の間を無限に反射するかのように繰り返されるマッチョなリズム、そしてそれらを一気に歪ませる複雑で奇妙な展開に圧倒されるが、さらに今作では声という楽器を駆使することで新境地を拓くことにも成功している。唯一無二とは彼らのことを言うのだ! (大久保 洋二/bounce 2007年05月号掲載)

CLAP YOUR HANDS SAY YEAH
『Some Loud Thunder』
V2(2007)
〈名盤〉と謳われたファースト・アルバムを軽々と超えてしまった。ここまで完璧なものを前にすると感動や驚きの言葉は失われ、思わず沈黙してしまう。CYHSYの2作目を超えるものがこの先10年間、世界中どのインディー・シーンからも出てくるとは到底考えられないからだ。プロデューサーにデイヴ・フリッドマンを迎えて、既存のローファイ感にサイケなフィルターを通した感覚はまるで〈21世紀のヴェルヴェット・アンダーグラウンド〉! 奇妙に歪んだポップなメロディーが、ファンタジックなノイズに彩られてユラユラと美しくダンスする。米国ではいまだレーベル契約を持たない彼らは間違いなく異端であり、売れるバンドの定説を完全に無視した存在である。しかしすでにフォロワーまで生まれている事実は、彼らが新時代のロック・スターであることを物語っているのではないか。全人類必聴の傑作……この言葉を初めて使うときがきた。(冨田 明宏/bounce 2007年01,02月号掲載)

クラムボン
『Musical』
コロムビア(2007)
これまででいちばんがんばっていない。そこがいい。これまでのクラムボンは、どれも力作には違いないけど、どうにも一生懸命感が強く滲み出すぎていて数回聴くとしばらく間を置きたくなったものだが、これは違う。みずから本作のミックスも手掛けたミトによるデモそのままの曲と、セッションで作られた曲が約半々。だからか、ポップに振り切った曲から脳内で完結したような曲までさまざまだが、不思議と温度は一定でいずれも風通しは凄く良い。おそらくは昨年のカヴァー集『LOVER ALBUM』が一つの転機になったのだろう。ここでの3人は緊密な関係の上にいながらにして、いままでになく妙に緩く妙に適当だ。そういえば、原田郁子の〈MUSIC〉の発音は〈ミュージック〉じゃなくて〈ミョージック〉なんだな。クラムボン、ここにきて〈妙ジック〉ってな、良い湯加減のバンドになってきた。(岡村 詩野/bounce 2007年06月号掲載)

JONATHAN RICHMAN
『Not So Much To Be Loved As To Love』
Vapor(2004)
流しのギター、船乗りの歌声、ジョナサンが帰ってきた! 53歳を迎えたジョナサンのますます狂おしいほどに〈十代〉な歌に、オープニングから胸はギューギュー締めつけられっぱなし。盟友トミー・ラーキンスのニヒルなドラミングも相変わらず不良。決して円熟しない永遠のアマチュアイズムのような、このしなやかな力強さはジョナサンが正真正銘のロックンローラーである証。男は泣いて女は恋する、ジャケどおりの夕焼け盤。(村尾 泰郎/bounce 2004年08月号掲載)

MIKA
『Life In Cartoon Motion』
Universal(2007)
英BBCが発表する〈2007年もっとも注目すべき新人アーティスト〉の第1位に見事輝き、先行カット“Grace Kelly”がシングル・チャート1位を獲得。そんないまいちばんホットな弱冠22歳の天才シンガー・ソングライター、ミーカが傑作デビュー・アルバムを発表しました! ベイルート、NY、パリ、ロンドンと彼の育った街を巡るかのように、劇的に変化するポップ・ミュージックが織り成すマジカルな世界観はまるで〈イッツ・ア・スモール・ワールド〉! 幼少時代にクラシック畑で培ったという確かな作曲のセンスは流石で、ベックよりも肉体的でストレートなサウンドと、プリンスを彷彿とさせるファンクネスは〈ひとりシザー・シスターズ〉状態です。とにかく、この一枚が王道ブリティッシュ・ポップの新たなスタンダードとなることは間違いないでしょう。ちなみにミーカ自身はかなりのイケメンで、ポール・スミスのモデルとしても活躍中です。(白神 篤史/bounce 2007年03月号掲載)

toe
『new sentimentality e.p.』
machupicchu(2006)
自身のレーベル設立第1弾としてリリースされた映像作品に続く4曲入りEPは、前作をひとつの集大成として、さらなる実験性で未踏の地へ向かった意欲作。ボトムにある彼ららしいエモーショナルな展開はそのままに、アコースティック・ギターや鍵盤、そしてメンバー自身による初の歌モノといった〈生〉へのこだわりが印象的だ。mito(クラムボン)をプロデューサーに起用したことで、新たなる視野の広がりも演出されている。(榊原 聡/bounce 2007年01,02月号掲載)

SOIL & "PIMP" SESSIONS
『PIMPOINT』
VICTOR(2007)
いまや世界レヴェルで活躍する伊達男たちのサード・アルバムが登場。先行シングル“マシロケ”のように凶暴性と破壊力を秘めたハードコアなサウンドは保ちつつ、今作ではルーツであるジャズ色が濃厚に。フレディ・ハバード“Red Clay”のカヴァーや、さらに磨きが掛かったスリリングなソロ回しなど、ジャズ・ミュージシャンとしても卓越したスキルを持つ彼らならではの、聴き応えのある楽曲がズラリと並んでいます! (小高 麻子/bounce 2007年03月号掲載)

PETER BJORN & JOHN
『Writer's Block』
V2(2006)
〈口笛ソング〉でお馴染みのアノ人たちがいよいよ日本デビューです! 某FMラジオ局で話題となって、あれよあれよとエアプレイ・チャートを制してしまった彼ら。その素性はピーターさんとビヨーンさんとジョンさんという、ユニット名そのままな構成のスウェディッシュ・ギター・バンドでした。アルバムに漂うのは、暖炉で爆ぜる温かい火花のようなローファイ・キラキラ・ポップ。3作目にしてついにビヨ~ンとブレイクか!? (柴田 かずえ/bounce 2007年01,02月号掲載)

サイプレス上野とロベルト吉野
『ドリーム』
LOCKSTOCK(2007)
1MC+1DJで見せるマイクとターンテーブルの丁々発止で、ジャンルを越えてステージを股にかける横浜のコンビが、待望のフル・アルバムをリリース。まっすぐなひたむきさとコミカルな打ち出しが入れ代わり立ち代わりする本作の耳通りは、あくまで軽やか。メロウなネタ使いに開放感が溢れるトラックの上で、次をめざす思いをストレートに歌う“Bay Dream~フロム課外授業~”があれば、ブーミンな低音が耳を引く、芸能ラッパーと自分たちを取り巻く理解のないリスナーを揶揄するばかりか、世の狂った日常にひとくさり入れる“P.E.A.C.E.―憤激レポート―”もある。そんなしたたかさは、子供用の音楽教則レコード(?)までネタに持ち出すくすぐりから、王道ファンクへと繋ぐ“音楽遊び”一つにも。バ○クーダのあの曲をモチーフに羽目を外す“横浜~藤沢酒呑みラップ”の宴会ノリも、DEEP SAWERの見事な客演と相まって最高っす。(一之木 裕之/bounce 2007年03月号掲載 )