MONO FONTANA
アルゼンチン音響派のなかでも一際独特の存在感を放つモノ・フォンタナ。いまどき〈孤高の鍵盤奏者〉という肩書きがこれほどハマるアーティストもなかなかいないだろう。10代をドラマーとして過ごし、鍵盤楽器は20代になってから独学で習得したという経歴や、飛行機嫌いのために国外には滅多に出掛けない(ゆえに来日もしていない)という行動、ソロ作品をほぼ10年間も発表しないなど、ミステリアスさでも群を抜いている。98年以来となる待望の新作『Cribas』は、極めてシンプルなフォンタナのピアノと、微かに響く環境音/サンプルとの繊細なアンサンブルだが、いわゆる現代音楽的な冷たさはまったくない。そこに広がっているのは、ひとつひとつの音を慈しむように織り上げられた温かく柔らかな音響世界である。