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1 ロックステディの成り立ちと特徴
今回のテーマは〈ロックステディ〉ということですが、実に謎な部分の多い音楽なんですよ。ジャマイカ音楽がスカからレゲエへと移行していく66年~69年頃にかけて流行したあるスタイルを〈ロックステディ〉と呼んでいるワケですが、スカとの境界線は?と問われると、これが非常に曖昧なものでして……。一般的にスカの性急な裏打ちのリズムをゆったりとスロウにしたものがロックステディと思われがちですが、音楽的に解析してみると、1拍ごとに裏打ちのリズムを刻んでいたスカに対して、ロックステディはそれを1つおきにしたもの。つまり、テンポでいうとロックステディのほうが早いのです。〈66年に熱波が襲い、あまりの暑さに人々が早すぎるスカからゆったりとしたロックステディを好むようになった〉という説もありますが、テンポに焦点を絞ると、それも辻褄が合わなくなっていきます。
ここで重要なのは、ジャマイカ音楽がアメリカ音楽の変遷と密接な関係にあるということ。ジャイヴやジャンプ・ブルースの時代から、リズム&ブルース~ソウルに移っていくのと呼応して、ジャマイカでもビート重視の指向から歌心に満ちたメロディーが求められるようになり、そこから生まれたのがロックステディという音楽だった、と。とはいえ、単なる猿真似に終わらないのがおもしろいところで、例えばジャイヴのシャッフル・ビートから裏拍を強調したスカが生まれたように、リズム&ブルースの歌うようなベースラインが、ロックステディでは細かく刻まれるようになり、それが1つのリズム・パターンとして成立するぐらいの主張を持ちはじめる。そんなジャマイカ人ならではの解釈から生まれた個性溢れるロックステディ期のリズム・トラックは、その後も幾度となくリメイクされ、現在までしっかりと息づいているのです。