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第13回 ─ デジタルミュージックガイド 2007 その4 - スペシャル総括対談

第13回 ─ デジタルミュージックガイド 2007 その4 - スペシャル総括対談(2)

連載
bounce.com 5th Anniversary
公開
2007/01/12   14:00
更新
2007/01/12   20:39
テキスト
文/bounce.com編集部

――では、MySpaceについてはどういう印象を持っていますか? マイ・ケミカル・ロマンスやリリー・アレンは、MySpaceがきっかけでブレイクしたと言われています。

田口 彼らはインタビューで「MySpaceは全然関係ない。ファンが勝手にやったことだ」なんて言ってますよね。単に認識不足なのかもしれないけど(笑)。MySpaceは正直英米でどういう扱いをされているのかリアルに想像できないところがあります。

タクヤ 日本版MySpaceは今のところはまだ発展途上な印象ですよね。

田口 日本のアーティストでページを作ってる人もいますが、世界を視野に入れているかドメスティックを貫くかによって意味が違ってくると思う。ドメスティックならmixiのほうが便利。mixiじゃなくてもYAMAHAのプレイヤーズ王国とかmuzieとかありますしね。ただ、日本より外国で人気があるノイズ系とかのアーティストはほぼ全員使ってますね。本人がやってなくてもレーベルの人やファンがやってる。Dir en greyの米国での人気もやっぱりMySpaceが大きいでしょうし。

――確かに、まだアメリカと日本では、かなり温度差を感じます。

田口 「アメリカ最大のSNSが日本上陸、どうなるmixi」みたいな論調でビジネス誌に取り上げられてますが、そこまで浸透してないですよね(笑)。

――その理由はなんだと思いますか?

田口 なんでしょうねえ……。ひとつ思うのが、MySpaceのシステムって実はかなり適当なんですよね。アーティストのページをファンが勝手に立てまくってるし、コメント欄には業者がワラワラくるし。mixiが素晴らしく秩序ある空間に見える(笑)。

タクヤ 確かに、アーティスト本人なのかファンなのかわからない、というのはひどい。

田口 で、これは想像なんですが、アメリカ人はそもそもその辺を気にしてないんじゃないかと。彼らは情報さえあれば公式だろうがマニアが運営してようが関係ないって感じだと思いますよ。

タクヤ その自由さがアメリカっぽいというか、ネットっぽいというか。

田口 たぶん最初は本人がアップすることしか想定してなかったと思うんです。それがあまりにも急激に普及しちゃったから、整備が追いついてないのが実情じゃないかと。勝手な想像ですが。

タクヤ 〈音楽好き〉のためのコミュニティースペースをうたっているけれど、権利の管理などはまだほとんど考えられてないですよね。

田口 でも最近はレーベルも作って音楽業界に本格参入してきてるんですよ。米国でのMySpaceのつかわれ方と動向については、今年はもっと詳しく研究するつもりです。

――ではNapsterの日本版についてはどう思われています?

田口 1:音楽を聞くのはほぼ自宅、2:洋楽中心、3:気に入ったものは買う、4:色んなジャンルを聴く……こういう人にはぴったりのサービスだと思います。

タクヤ それは田口さんにそっくりそのまま当てはまる(笑)。確かに洋楽ファンにとってはすばらしいサービスですよね。邦楽好きとしてはうらやましいです。

田口 僕の場合、Napsterで聴いて気に入ったらもちろん買います。むしろNapsterを導入して、CDを買う量は明らかに増えました。

タクヤ 本当に試聴用として使っているんですね。

田口 これこそ自分の欲しかったサービスだと思っていますし、僕みたいな人はレコード会社にとってもNapsterにとっても理想のユーザーと言えるでしょう(笑)。ただし、すべての人が僕と同じように動くとは限りません。むしろ少数派なんじゃないかと思っています。

タクヤ Napsterはコアな音楽好きにとっては理想のサービスですけど、月に数枚しかCDを買わないようなライトな層にとっては少し過剰なのかもしれないですね。

――一般の人に浸透するまでには、どのような問題があると思いますか?

田口 まず魅力を伝えるのが難しい。Napsterのようなサブスクリプション(定額配信)サービスはiTunes Storeのようなダウンロード購入と違って、ものすごく説明しづらいんですよね。意外に知られてないんですけど、Napsterは楽曲単位で購入して携帯プレイヤーに転送したりCD-Rに焼いたりして楽しむ、iTunes Store的な機能も内包してるんですよ。

タクヤ 一部の携帯電話にも対応してるんですよね。KAT-TUNが宣伝してますが。

田口 月額1980円で携帯がほぼ無制限の試聴機になるんですよね。大げさに言えばタワーレコードの試聴機を常に持ち歩ける、と。これがどんなにすごいことかどうしてわかってくれないんだろうか……。でも、少なくともbounce.comの読者には魅力的なんじゃないかなあと思うんですよ。

タクヤ そうですね、この記事を読んでいるような人には刺さりますよね。

田口 ぼくが中高生の頃はお金がなくて、少ない小遣いから厳選して貸しレコード屋で借りて、テープにダビングして何回も聴いたわけですよ。それが月に1980円で、マニアックなコレクターと同等以上のコレクションを得ることができるんですよ。もううらやましくてしょうがない。

タクヤ 邦楽のラインナップも徐々に増えてきているみたいなので、ぼくは今後に期待したいです。