bounce.comは2006年12月で5周年を迎えました! その記念企画として、年末年始の4週間、スペシャル・コンテンツを連日更新していきます。年が明けての第3週は〈デジタルミュージックガイド 2007〉をお届け。ますます切っても切り離せない関係になりつつある音楽とPCのあれこれについて、キーワードごとに検証&解説いたします。最終日は、前回までの記事を執筆したIT系ライターの田口和裕さんと、邦楽ニュース・サイト〈ミュージックマシーン〉を主宰するタクヤさんのお二人をお招きしてのスペシャル対談。これまで取り上げたトピックのおさらいと、今後注目のサービスについて、たっぷりと語っていただきました!
――昨日までの更新では、去年盛り上がったサイトとして、YouTube、MySpace、Napster Japanを挙げて、それぞれを田口さんに解説していただきました。それらの出現が一般リスナーや音楽業界、IT業界にそれぞれどのような影響を与えたと思いますか?
田口 まずYouTubeからですかね。現状、新作から旧譜まで大量のプロモ・クリップがYouTubeを使えばフルで視聴出来る状態になってますよね。もちろんこれは著作権的にはグレーではなくブラックなんですが、でもこれが本来あるべき環境だと思います。プロモ・クリップ自体がそもそもプロモーション目的なのだから、ユーザーがオン・デマンドで見ることが出来るのは当然。むしろこの状況はメーカー側が作ることだったと思います。
タクヤ 最近はミュージシャン自身が自分のプロモ・クリップをYouTubeにアップしているケースもありますよね。作り手はやっぱり作品を見てもらいたい、届けたいと思っているということでしょう。
田口 特に露出が限られているインディー系アーティストにとってはすばらしいメディアですよね。
――その一方で、コンテンツを作る側にはYouTubeを嫌がっている人も多いのではないかと思います。
田口 もちろん困ることもあるとは思いますが、例えばライブの流出映像にしても、画質は相当落ちているわけですし、目くじら立てるほどのものではないと個人的には思いますね。ただ「あの画質で全然構わない」という層がいるのも確かなんですよね。
タクヤ ぼくもYouTubeのあの画質は試聴用と割り切って、好きなものはCDやDVDを買う、というスタンスですが、「あの画質で満足」という層がいるのは著作権者にとって見過ごせない問題でしょう。
田口 曲を覚えてカラオケで歌いたい層というか。着うた落とさなくてもYouTubeでタダで見ればいいや、という層も確かにある。問題はそこなのかな。
タクヤ YouTubeは画質が低いけど、そうじゃないサービスも出てきていますよね?
田口 出てきてますね。DivX Stage6とか、GUBAとか。
――アップロードできるファイル容量に制限がないんですか?
田口 DivX Stage6は2Gまでオッケー。かなり太っ腹です。でもYouTubeより著作物に厳しく、削除が早い。確かに版権モノはあまり見ません。自分でDivXにエンコードするのは障壁高いですしね。でも、こういう技術的問題はいずれ解決するはずであり、将来的に、誰もが高画質で私的複製したものをオンラインに乗せることができる環境っていうのは必ず実現するでしょう。そうしたらどうするんだろう(笑)。
タクヤ YouTubeがなかったとしても、こういう動きは必ず出てきたはずだし、もう止められるもんでもないですよね。
田口 そうですね。旧Napsterやファイル交換ソフトもそうですが、お上が潰しても絶対滅びませんよね。だからやっぱりメーカーは考え方を変える必要があると思うんですよ。
タクヤ 例えば?
田口 YouTubeにはメーカーが自らプロモ・クリップをアップし、販売へのリンクに誘導する。ライブDVDなんかもダイジェストをアップする。そうしたうえで個人の勝手なアップは可能な限り削除する。
タクヤ なるほど。手間はかかるでしょうが、メーカー側がYouTubeを戦略的に活用すれば効果的なプロモーションが実現できるでしょうね。
――野本かりあとコロムビアの廣瀬社長がYouTubeを使ってメッセージをアップロードしていました。
タクヤ 廣瀬社長はYouTubeに肯定的ですよね。さっき田口さんが言ってたみたいに〈プロモーション〉クリップだと考えれば、YouTubeほど便利なものはないですから。
田口 最近洋楽のアーティストはほぼすべて公式サイトでもプロモ・クリップをフル試聴してますよね。予算のないアーティストはYouTubeへのリンク貼っているし。
タクヤ そうですね、なかにはアルバムまるごと、なんてケースもある。
田口 そうせざるをえない、といったところだと思いますが。ラジオや有線放送、ジューク・ボックスと同じ販売促進メディアと割り切るしかないんじゃないかなあ。とにかく「ぶっ潰してやる」じゃ堂々巡りですよね。さすがにもうそんな姿勢のメーカーは少ないと思うけど。