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第104回 ─ 高田漣を取り巻く世界を〈12の覚え書き〉で紐解けば……

第104回 ─ 高田漣を取り巻く世界を〈12の覚え書き〉で紐解けば……(3)

連載
360°
公開
2006/11/16   22:00
更新
2006/11/16   22:04
ソース
『bounce』 281号(2006/10/25)
テキスト
文/桑原 シロー

7.「涙もろくなってきた」
「湿っぽい感じを出すことに対していまだに抵抗があって、“私の青空”もボツにする可能性があった。でも、途中から〈隠さなくていいや〉って。そうそう、最近涙もろくなってきてて(笑)。どうでもいいようなドラマを観て、泣いたりしてる(笑)」。

8.「違和感に惹かれる」
「スライ&ザ・ファミリー・ストーンやPファンク、それにYMOみたいに不思議な違和感を残す音楽が好き。今作は、作ってみて得体の知れない、結果が見当つかない曲を選んだ。また現代的になりすぎるのも、ルーツに寄るのもイヤで、全体として違和感のあるコントラスト作りを意識したつもり。食べ合わせの悪さ? 例えばクレープにハチミツかけてサーモンが入っているような……実際は好きじゃないけど(笑)、そういうものへの興味が最近は強くて」。

9.理想の女性像
「あのね、昔からず~っと変わらないんだけど、家で本ばかり読んでいるような人は苦手ですね。文科系か体育会系かっていったら、ダンゼン後者。なんでだろ、自分がそういう系だったからかな(笑)。裏表がなくて、自然とリーダーシップを取れるような、潔くカッコ良い女性がイイんですよ」ということで繋げるのもなんだが、彼の女性ミュージシャンのサポート仕事を見てみれば……「カッコイイな~」と呟きながらペダル・スティールを弾いている高田漣の姿が目に浮かんでくるのだった。

10.理想のミュージシャン
「“薔薇と野獣”は衝撃的だった。YMO、はっぴいえんど、ティン・パン・アレーと進んで、最後に『HOSONO HOUSE』を聴いたんだけど、エレピの音とかから〈この曲はYMOじゃん!〉って思った。そしたらすべてが繋がった。どんなスタイルでやっても細野さんのなかではきちっと整理できてるんですよね、結果として違うものが出てきても。今回、東京シャイネスに参加した時も、着想の話とかいろいろと話を聞けて、いろいろ発見できましたね」。

11.『12 notes』でカヴァーした曲
  先述の“薔薇と野獣”にYMOの“Radio Junk”、イタリアの大作曲家であるニーノ・ロータの“Amarcord”、そしてニューオーリンズの偉人=アール・キングの“Big Chief”――『12 notes』でカヴァーされたこれらの曲は、高田にとってもちろん並列にある。「すべて〈結果どうなるかわからないもの〉を基準に選んだところはある。(高橋)幸宏さんが歌う“Radio Junk”も、細野さんが歌う“Big Chief”も、最初は歌ってもらえるかどうかわからなかったけど、2人の歌が入ることで完成しましたね」。

12.〈12の覚え書き〉
「最初は〈12曲すべてキーが違う〉とか、〈1音目が12音階順になる12曲にしよう〉みたいにコンセプトを考えたんだけど、途中で〈そんなことして何になるんだ?〉と思いはじめて(笑)。“12 notes”の歌詞を書き直していて、〈これは12の覚え書きじゃないか〉と閃いた。自動筆記のように思いつきを残していって、まとめればいい。完成すれば、あとは誰かが説明を付け足してくれるだろう、と。ボブ・ディランが昔、〈歌いたいことをノートに書き留めていったらいっぱいになったからアルバムを作ったんだ〉ってキザったらしいこと言ってたけど、まさにそういう感覚。その結果、穏やかなエゴというものが出てきて、自分がよく見えてしまう作品になった」。