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第104回 ─ 高田漣を取り巻く世界を〈12の覚え書き〉で紐解けば……

第104回 ─ 高田漣を取り巻く世界を〈12の覚え書き〉で紐解けば……(2)

連載
360°
公開
2006/11/16   22:00
更新
2006/11/16   22:04
ソース
『bounce』 281号(2006/10/25)
テキスト
文/桑原 シロー

1.ルーツ・ミュージックとの関係
  70年代アメリカン・ミュージックの名曲を素晴らしいサウンドで料理する青年――『LULLABY』の頃には少なからずあったそんな認識も、〈それだけじゃないんだけど〉という自己申告作ともいえる『WONDERFUL WORLD』『RT』によって改められてきた。いまも彼は変わらず、名シェフとしてカヴァー料理に腕を振るい続けるが、「最近はフレキシブルになった」らしい。「ルーツ音楽の扱い方や掘り下げ方に対して、ちゃんと自分のフィルターを通してさえいれば、元のスタイルに沿わなくてもいいと考えられるようになった」――それは、細野晴臣との関わり合いのなかで学んだことが大いに影響している模様。

2.先輩ミュージシャンからも引っぱりだこ
  毎月のように〈高田漣〉とクレジットされたアルバムが登場する。大御所から新人まで、彼のペダル・スティールを必要とする音楽家は後を絶たない。それにしても、振り返れば雑多な面々だと言わざるを得ないが、「(マイク)眞木さんや細野さんの音楽は僕のなかでは並列。同じコーナーに置いてある音楽だと思っているから」と彼は言う。「あと最近、〈要求に対して答えよう〉という意識ではなく、自然に提示をできるようになった。良い意味で投げやりにやれるようになって、プレッシャーを回避できるようになった」とも。

3.同世代ミュージシャンとの共振
「かつてもっと若かった頃は、音楽家としてもそうなんだけど、歳を取ることに憧れを持ってましたね。でも最近は歳相応のままで良いと思えるようになったかな。それは、青柳(拓次)くんや(永積)タカシくんやオオヤ(ユウスケ)くんといったミュージシャンたちと出会えたことが大きいですね」と語る高田。その面々と親密な会話を交わしながら、これまでに数々の名品を作り出してきた。ただ持っているセンスが近いとか似てるってことじゃなく、しっかりと音楽的会話ができる同世代のミュージシャンたちと共に、お互いを刺激し合いつつ、今の自分たちの関係のなかから自然に湧き出てくる生なサウンドをキャッチしようと切磋琢磨してきたわけなのである。

4.〈ホームランバッターではない〉
「イチローか松井かと言えば、前者タイプ。すべてにヒットがあるアヴェレージの高い人が好き。子供の頃も盗塁とかすごい好きで(笑)、試合を決めるというより作っていくタイプ。後ろでやいのやいの言ってるタイプでしたよ。あと、何かを託されると途端に真価を発揮できなくなるんだよなぁ(笑)」。

5.多岐に渡るバンドでの活動
  鈴木惣一朗らとのRAMをはじめ、これまで彼はいくつかのバンドの一員としてシーンに登場している。どのバンドでも控え目ながら、音色では存在感を放ってバンドを動かしていく屋台骨の働きを担うことが多いようだ。バンドは「一員になることで、いろいろな制約に向き合うことがおもしろい」と彼は言うが、ソロの時とは違い、Hands of CreationやSAKEROCKといった面々と組んだ時の〈頼りがいのあるアニキ〉な感じが良かったりする。プレイヤーとしての可能性を広げようとする姿勢が見られることもしばしば。

6.父・高田渡
『12 notes』には、高田渡のレパートリーでもあり、親父さんの墓前にそっと花を手向けるような“私の青空”のカヴァーが登場する。「親父が亡くなった時期に“Pop Music”が出来たんです。心のバランスを取ろうとしていたのか、どこか明るさを求める曲になって。〈俺もそういう曲を書くんだ〉って思えておもしろかった」。