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第8回 ─ GARAGE

連載
Di(s)ctionary
公開
2006/11/09   23:00
ソース
『bounce』 281号(2006/10/25)
テキスト
文/轟 ひろみ

さまざまな音楽ジャンルについて丁寧にお教えする誌上講座が開講! 皆さん、急いでご着席ください!!

1. ガラージの成り立ちと特徴

 受講生の諸君は〈Garage〉をどう読むかな? そう、ガレージだとラフでロッキンな雰囲気がするけど、ガラージやガラージュと読むと黒光りした昂揚を感じるよね。まあ、今回諸君には否応なく〈ガラージ〉と読んでもらうとして……NYのキング・ストリートにあったクラブ〈パラダイス・ガラージ〉がその語源なんだ。そこは70年代後半からのアングラなダンス・カルチャーを象徴する場所だったんだけど、そのレジデントDJを務めていたのが、かのラリー・レヴァン。で、〈ガラージ〉とは彼がそこでプレイした音楽の総称なんだ。〈ウェアハウス〉でプレイされた音楽が〈ハウス〉と総称されたのと同じだね。ただ、ラリーはソウルもファンクもロックも踊れる曲なら何でもフロアに投入したそうで、〈ガラージ〉という定型の音楽があったわけじゃない。これは覚えて帰ってください。

 ただ、一方では〈ガラージ寄りのトラック〉とかいう表現も目にするし、やっぱりガラージに定型があるの?って……矛盾するようだけど、これがあるんです。ラリーがプレイしたなかでも、その後のハウスに直結したディスコやファンクなど、黒人音楽の伝統に則ったアッパーなダンス・トラック、具体的にはフィリー・ソウル~サルソウルなどの流れを汲む〈歌モノ〉系の楽曲スタイルを〈ガラージ・ハウス〉と呼ぶわけだ。つまり、ラリーがプレイした楽曲に限定される狭義の〈ガラージ〉と、その一要素を拡大解釈した定型のサウンドを総称する広義の〈ガラージ(・ハウス)〉という2つの概念が存在するわけだね。そして、80年代後半から90年代前半のNYハウスで後者のスタイルが大流行した結果、〈ガラージ〉は広義のサウンド・イメージと共に世界に広まった……と捉えていいんじゃないかな。こういう区分は諸説あるけど、ここでは意図的にごっちゃにして紹介してみましょう。

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