時代や世代を超えて輝き続けるジャパニーズ・ナンバーの数々。そんな名曲たちをカーステで流しながら、今日も気ままなドライヴへGO GO!
――今日も仲良くドライヴ中の達也とトオル……おっと、今日はもうひとり! 達也のガールフレンド、愛ちゃんもいっしょです!
達也「さっきからずっと外の景色ばっか眺めてるけど、どうかしたの?」
トオル「達也クンったら、ロマンチックじゃないのねん。オレはいま、夏の終わりを惜しんで、ちょっと感傷に浸っているところなのよん」
達也「っていうか、みんなといっしょのときに自分の世界に入らなくてもいいだろ」
トオル「このねえ、クルマの窓越しに流れていく晩夏の風景がいいんだってば。なんでわかってくれないんですかぁ!……あっ、いまの畠山鈴香容疑者のマネね」
達也「……」
愛「その気持ちわからないでもないです」
達也「まあ、オレもわからなくはないけど……。それはそうとさぁ、なんでトオルが助手席に座ってんだよ。このメンツだったら、フツーはうしろだよな」
トオル「あっ、ゴメンチャイ。いつものクセでつい前に乗っちゃった。でも、そう言いながら、ルーム・ミラー越しに目配せしちゃったりして楽しんでんじゃないのぉ!」
達也「(無視)。愛ちゃん、ノド乾かない?」
愛「うん、私は大丈夫だけど、タックンとトオルさんは?」
トオル「おっ、達也ってタックンって呼ばれてんだぁ!」
達也「いちいちうるさいの! そんなこと言ってないで、音楽でもかけろよ!」
トオル「ハ~イ。オレが昨日買ったCDもあるけど」
達也「なに買ったの?」
トオル「え~っと、『Niagara SUMMER~Niagara Cover Special~』ってやつ。こないだ〈春盤〉が出てたシリーズの〈夏盤〉」
愛「あっ、それ私も買いました。“カナリア諸島にて”って曲、好き」
達也「オレも聴いたけど、全部イイ感じのカヴァーだった」
トオル「そうなんだあ。実はオレ、買ったけどまだ聴いてないんだよね。まあ、これはウチに帰って聴こうかな。ここはひとつ〈いつもの箱〉(注)から……」
達也「愛ちゃん、そこにある箱から、良さそうなカセットテープ選んで。そうだなあ、夏っぽい感じのがあれば」
愛「あっ、これなんかどう? 〈エンドレス・サマー〉っていうの。これ、インデックス・カードっていうんだっけ? なんか、ジャケットの写真っぽいものが曲ごとにプリントされてて、ほとんど海の景色!」
達也「親父も凝るなあ」
トオル「どんな人の曲が入ってんの?」
愛「今井裕、ブレッド&バター、角松敏生、山下達郎……」
達也「おっ、1曲目からすごくメロウで雰囲気のある曲だなあ」
トオル「ちょっとせつない気分になるにゃあ(と言って、窓の外に目をやる)」
達也「しらじらしいリアクションすな!」
愛「でも、夏が終わるって思うと、ちょっと感傷的な気分になっちゃうよね」
達也「今年の夏もいろんな想い出ができたなあ……」
愛「水族館にも行ったし、花火も見に行ったし……」
トオル「オマエら、いつのまに!……うらやまちい(ショボン)」
愛「合コンで知り合ったっていうカノジョはどうしたんですか?」
トオル「あっ、美穂ちゃんね。美穂ちゃんはアルバイトが忙しいみたいで……」
達也「最近、美穂ちゃんのこと言わないなと思ったら、そういうことだったんだな」
愛「じゃあ、これからトオルさんの夏の想い出を3人で作りに行きましょう!」
達也「そうだな。ションボリしたトオルの顔を見てるのもなんだし」
トオル「くくぅ!(涙)。達也、愛ちゃん、ありがとう!」
――中学生の時に聴いた広末涼子のアルバム『ARIGATO!』は名盤だよなあ……と心でつぶやくトオルを乗せて、達也の愛車は海沿いに向かって走る。
2006年9月。夏は終わらない。
登場人物紹介/
達也……のほほ~んとキャンパス・ライフを送っている大学3年生。意中の愛ちゃんとは友達以上恋人未満。
トオル……達也のキャンパス仲間。ちょっと前にコンパで知り合った美穂ちゃんにイレコミ中。意外と純情。
達也パパ……編集テープ作りが趣味の、ちょっと古風な音楽ファン。高校時代は甲子園に出場したこともある。
(注)いつもの箱……達也の愛車の後部座席に置いてある〈いつもの箱〉には、達也パパが編集したカセットテープがごっそり入っているんです!