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第2回 ─ 〈FUJI ROCK FESTIVAL 06〉予習ディスク・ガイド

第2回 ─ 〈FUJI ROCK FESTIVAL 06〉予習ディスク・ガイド(3)

連載
オレらの 夏 フ ェ ス 予習・復習帳 06
公開
2006/07/20   13:00
更新
2006/08/10   23:16
テキスト
文/bounce.com編集部

7月30日(日)に出演するアーティストの作品を紹介

THE STROKES
『First Impressions Of Earth』
RCA(2005)

  これまでストロークスの代名詞とされてきた〈スタイリッシュ〉という形容詞は、この新作には不要。喉の奥底から声を絞り出し、リズミカルにチャントし、そして時には叫ぶジュリアン・カサブランカス。加えて独創的なアルペジオやメタル風のリフを鳴らすギターや、パーカッションやメロトロンも使った音作りまで、激情が端々から迸る。実験的なピースを組み立てた曲構造はかなり冒険的だが、そうは感じさせないのも見事。(妹沢 奈美 bounce 2006年01・02月号掲載)

SUPER FURRY ANIMALS
『Love Kraft』
Epic(2005)

  昨年はベスト盤をリリース、そしてグリフ・ライズのソロ・デビューなど、なにかと話題の多かったスーパー・ファーリー・アニマルズが7枚目となる新作をリリース! キャリアを重ねるごとに深く濃厚な作品を届けてくれた彼らですが、今作もハンパないです。情熱の国スペインにてレコーディングされたオーガニックなオーケストラル・サウンドを、全編サイケデリックなアレンジが包み込む。ラヴ・アンド・ピースな至福の一枚。(白神 篤史 bounce 2005年09月号掲載)

SNOW PATROL
『Eyes Open』
Polydor UK(2006)

  絶大な人気を誇る地元UKとここ日本との温度差は、この2作目を境にキッパリと解消されるだろう。前作で聴かれた轟音と美旋律によるコントラストという〈伝家の宝刀〉はより明確になり、そこにきめ細やかさまで備わってきた。この優しい押し引きは、たださめざめと泣く叙情派から一気に飛躍した紛れもない証明である。シーンの先頭を走るコールドプレイの背中が目の前にまで見えた、まさに〈開眼〉の一枚である。(加賀 龍一 bounce 2006年05月号掲載)

JASON MRAZ
『MR.A-Z』
Elektra(2005)

  カリフォルニアに暮らす、ロックとラップが好きな現在28歳が鳴らすポップ・ミュージック。ビートはヒップホップで、ギター・サウンドはオルタナ以降のそれ、そして歌は適度にソウルフルで、時にフォーキー。ジェイソン・ムラーズは、まさしくそんないまのアヴェレージ・ホワイトの典型的なアーティストと言っていい。全米で大ヒットを記録したデビュー作から約2年ぶりとなるこの新作も基本的な下地は変わらない。スティーヴ・リリーホワイトがプロデュースに招かれ、元ジェリーフィッシュのロジャー・マニングやレイチェル・ヤマガタらが参加しているのには仰天したが、いまどきここまで臆面なくメインストリームを闊歩するような作品に仕上げたことがなにより立派。おまけに歌も上手いし曲もリスナーのツボを突くような展開になっていて、優等生すぎるのがあまのじゃくにはちょっと眩しいが、まあ、憎めない一枚ってことで。(岡村 詩野 bounce 2005年08月号掲載)

MOGWAI
『Mr .Beast』
HOSTESS/PIAS(2006)

  ペンギンのようにピョコピョコと動くスチュワート・ブレイスウェイトのかわいらしい姿は、着ぐるみに身を包んだ仮の姿だった。モグワイの新作はまさに野獣と化したサウンドだ。ノイズが増強されたラウドなギターと幾重にも重なる音のレイヤーに、快楽指数はグンとアップ。そして大胆に採り入れられたピアノが神々しく鳴り響く。ライヴの迫力にいちばん近いモグワイ史上もっとも荒々しく、もっとも美しい作品だ!(大久保 洋二 bounce 2006年03月号掲載)

大江慎也
『THE GREATEST MUSIC』
ユニバーサルGEAR/CREAGE(2006)

  ルースターズでのデビュー(80年)以来、いまだ絶大な支持を集める大江慎也。2004年に自身のバンド=UNのアルバムをリリースし、長き沈黙から音楽シーンに復帰した彼が、今回16年ぶりのソロ・アルバムを完成させた。しかも参加メンツに花田裕之、井上富雄、池畑潤二という、オリジナル・ルースターズが勢揃いしての作品なのだ。4人のパワフルさが伝わる“IS IT YOU?”に、“I DREAM”では〈俺は夢を見続ける〉と吠え、“OFF MEAN”では切れの良いロックンロールを聴かせる。“GO FOR THE PA-RTY”や“CHILDHOOD DAY”は初期ルースターズを彷彿とさせ、“THROUGH NIGHT”ではもはやイギー・ポップ状態。確かに声は衰えた。だが、放つ言葉の本気度が違う。それに歳を重ねてから、ふたたび夢に向かって動き出すロックへの情熱っていうのも尋常じゃない。これは男の生き様の1ページ。込められた魂はホンモノだ。(土屋 恵介 2006年3月号掲載)

KILLING JOKE
「Xxv Gathering!」
コロムビア(2006)

  さまざまな要素をブチ込み、現ロック・シーンに影響を与えた〈生きる伝説〉、キリング・ジョークの結成25周年ライヴDVDがこれっ! 強烈なまでのメッセージ性は旨味を増し、エッジの効いたサウンドもいまだ激ヤバ!!の壮絶映像。また、貫禄のある発言が連発されるインタヴューも伝説を作った男たちだから成せるワザ?(山口 コージー 2006年7月号掲載)

ゆらゆら帝国
『Sweet Spot』
Sony Music Associated(2005)

  〈めまい〉〈しびれ〉の2枚同時リリースからライヴ盤のリリースを挿み、2年3か月ぶりとなるオリジナル・アルバムが完成。いつも以上にバランスのいびつさや発想の奇抜さ(=美しさ)を楽しめる音響的遊びが満載ながらも、〈ゆらゆらサウンド〉というべきオリジナリティーのみを抽出した引き算的シンプルな音世界が描かれている。また、定評のある劇画的かつ哲学的である独自な奥深い歌詞も過去最高のキレ具合で、世界情勢から現代世相までのいろんな事象から、あれやこれやの象徴や比喩を駆使したエロネタまで、人間という生き物の根源をユーモア溢れる〈ゆらゆら語録〉にて表現。現在の日本(語)ロック・シーンの最高峰にして前人未踏の冒険でもある今作は、洋邦問わず全ロック・ファンはもちろん、全音楽ファンが耳を傾ける価値を持つ〈事件〉として捉えられるかも……そんなレヴェルに達してしまっているとんでもない一枚です。(ダイサク・ジョビン bounce 2005年06月号掲載)

LIKKLE MAI
『Roots Candy』
Beat Records(2006)

  日本が誇るレゲエ・ダブ・バンド、DRY&HEAVYで活動し、その独特の歌声で注目を浴びている彼女のファースト・アルバム。ディジュリドゥ奏者のGOMAを迎えた戦慄の幕開けチューン“My Old Flame”、衝撃的ジプシー・ダブ“Gypsy Woman”、さらに映画「カスタムメイド10.30」で木村カエラが歌う挿入歌“Why Are You In A Hurry?”のオリジナル版などを収録した、星の数ほどの人たちに愛されるであろうラヴ&ピースな名作です。(加藤 寛貴 bounce 2006年03月号掲載)

Magnolia
『NUTS』
bounce records/NMNLレコーズ(2005)

  ついに出た初のフル・アルバム! ダーティーなアメリカン・ルーツ・ロックを現代にアップデートしつつ、サイケでトリッピンな誘惑を体現するバンド・アンサンブル。フワリと浮かぶ雲のようなMAIの歌声もひとつの楽器として加わって、もう身体は浮きっぱなし! ゆらゆらと揺れる陽炎のようなサウンドが太陽と大地へ溶けていく……そこに地球の息遣いすら感じてしまいました(大袈裟?)。NATURAL CALAMITY好きも必聴です!(猪熊 徹 bounce 2005年11月号掲載)