時代や世代を超えて輝き続けるジャパニーズ・ナンバーの数々。そんな名曲たちをカーステで流しながら、今日も気ままなドライヴへGO GO!
――また今日も仲良くドライヴ中の達也とトオル。どうやらタワレコでお買い物した帰りみたいですよ、また。
トオル「ねえねえ、さっきいた店員のコ、結構可愛くなかった?」
達也「さっきって……あんまり観察してなかったなあ。どんな感じのコだったの?」
トオル「そうねえ、アイドルで例えると新垣結衣ちゃんみたいな感じかなあ」
達也「マジでぇ! つうか、そういうことは店にいるときに教えろよ」
トオル「悪ぃ悪ぃ。あのコさあ、たぶん大学出てるんだろうけど、これといって就職したいところが見つからなくて1年ぐらいフリーターしてたんだね。で、ミスドとかでバイトしてたんだけど、あるときタワレコがスタッフを募集しているのを知って、なんかやり甲斐ありそうだと思って応募して……」
達也「ずいぶん読むねえ」
トオル「実家暮らしで、カレシは2年ぐらいいないの。で、実はマイカーを持っていて……そう、ひとつ前の型のマツダのデミオ。色はブルー。休みの日にはたまに愛犬のルルちゃんといっしょにドライヴしてる感じ。犬の種類はシーズー犬でさ」
達也「なにを根拠に……でも、こういう想像は楽しいな」
トオル「だろ! そんでもって聴いてる音楽のセンスもイイ。タワレコで働いてるから、フツーの女の子よりはちょっと詳しくて、最近のお気に入りは……」
達也「というか、おまえより詳しいわけだから、おまえが知らないのとか聴いてるんじゃないの?」
トオル「ごもっとも」
達也「ところでさ、今日は何買ったのよ」
トオル「えーっとね、『Niagara SPRING ~Niagara Cover Special~』ってやつ」
達也「ああ、最近出たって聞いてたなあ。大滝詠一のカヴァーが入ってるやつだろ」
トオル「よく知ってんねえ」
達也「おまえは知らずに買ったのかよ?」
トオル「ジャケがさわやかな感じだったし、あとはコメント・カードで絶賛されてたから買ってみたんだけど……あっ、これのコメント・カードはきっとあのコが書いたんだな。あのコが書いたような字だったもん」
達也「はいはい。そういやあ、さっき〈いつもの箱〉(注)を覗いたら〈Niagaraなんちゃら〉って書いてあるテープがあったぞ」
トオル「マジで? どれどれ……おっ、あった。〈Niagara SPRING〉って、オレが買ったCDとおんなじタイトルじゃん!」
達也「中身もいっしょってことはないだろ」
トオル「でも、同じタイトルの曲が結構入ってるぞ」
達也「たぶんオリジナルのヴァージョンを入れてたりすんじゃない? さっそくかけてみたら」
トオル「そうね……ん? これって大滝詠一の声か?」
達也「うん、これはたしかに」
トオル「なんかさあ、初めて聴いたんだけど、なんかこう、爽やかな気分になるよな、大滝詠一の曲って」
達也「この人の代表的なアルバムに『A LONG VACATION』と『EACH TIME』っていうのがあるんだけど、ジャケットがアメリカっぽいというか、それも温暖なエリアの雰囲気がすごくするんだよね」
トオル「へぇ~。じゃあ、あながちオレの感想も的を射てるってことだな」
達也「そうね。その調子で、タワレコにいた女の子のプロフィールも当たってたらすごいけどな」
トオル「オレねえ、実はすごいのよ。だってさあ、愛ちゃんが東北出身だっていうのをひと目見て当てたし、あとは見かけのわりにハデな色のパンツ穿いてるとか……」
達也「って、それは当たってるかわからねえだろ!」
トオル「えっ、そうじゃないの?」
達也「知らないよ!」
トオル「知らない!って、達也ってばまだ確認してないんだあ!」
達也「るせぇなあ! 勝手に想像すんなよ!」
トオル「うわっ、達也クンたら顔が真っ赤になってるワ!」
達也「……」
登場人物紹介/
達也……のほほ~んとキャンパス・ライフを送っている大学3年生。意中の愛ちゃんとは友達以上恋人未満。
トオル……達也のキャンパス仲間。最近コンパで知り合った美穂ちゃんにイレコミ中。意外と純情。
達也パパ……編集テープ作りが趣味の、ちょっと古風な音楽ファン。高校時代は甲子園に出場したこともある。
(注)達也の車に積んである〈いつもの箱〉には、達也パパが編集したカセットテープがいっぱい入ってるんです!!