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第3回 ─ JIVE

連載
Di(s)ctionary
公開
2006/05/04   20:00
ソース
『bounce』 275号(2006/4/25)
テキスト
文/ワダ マコト

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Ⅰ ジャイヴの成り立ちと特徴

 ジャイヴです。レーベルの名前だったり、ダンスのステップをこう称したり、はたまたここ日本では缶コーヒーに〈JIVE〉と名付けたものもあったっけ。それなりに耳馴染みのある言葉ながら、はて……その語源となったジャイヴという音楽とは? これがなかなかに定義付けが難しい。というのも、音楽のスタイルそのものというよりは、もっと感覚的なものだからなのですな。

 まずは、スウィング・ジャズが大衆音楽のド真ん中であった30~40年代あたりに、笑いや魅せる要素をタップリ盛り込んで人々を楽しませた、いわば〈ミュージシャンと芸人のあいだ〉と呼べるような人々の存在が重要。〈ヴァウティ……マクヴァウティ……ルーニィ〉といった意味不明の造語や隠語を連発して聴衆を笑いの渦に巻き込んだスリム・ゲイラード、そして髪を振り乱しながら〈ハイデ・ホー〉とスキャットしたビッグバンド・リーダー、キャブ・キャロウェイ、絶妙のハーモニーの合間に口真似トランペットを聴かせたミルス・ブラザーズなどなど。手法はさまざまなれど、黒人ならではの自由な言語感覚だったり、新しいモノ好き~おもしろいモノ好きという〈粋〉なセンスでもってスウィングを愉快にしたのがジャイヴの真髄と言えましょう。チャーリー・パーカーら、当時の若手ミュージシャンによるビバップの流れでジャズがアーティスティックな面を強めていくなかで、それを横目で見つつあくまで大衆性やエンターテイメント性にこだわったのが、これらのジャイヴな人々だったわけです。

 スウィングからリズム&ブルースやロックンロール、そしてソウルやヒップホップへと音楽の主流が移り変わっていくなかで、脈々と受け継がれてきたエンターテイメント性。その源流こそがジャイヴです。言い切ってしまえば、JBのマント・ショウもヒップホップのヒューマン・ビートボックスも、またジャイヴなのです。おわかりいただけましたでしょうか?

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