時代や世代を超えて輝き続けるジャパニーズ・ナンバーの数々。そんな名曲たちをカーステで流しながら、今日も気ままなドライヴへGO GO!
――うららかな陽気に誘われて、今日もふたり仲良くドライヴ中の達也とトオル。
トオル「いやあ、すっかり春だね。春だよ。春じゃない? 春かよ!」
達也「この期に及んで〈さまぁ~ず〉か! というか、おまえの頭ん中が春みたいだな、どうやら」
トオル「わかる? あのさ、今度さあ、美穂ちゃんとさあ、横浜戦を観に行くんだぁ。あっ、〈横浜〉ってFマリノスじゃなくてベイスターズね」
達也「美穂ちゃんって、こないだ合コンで知り合ったっていう子? っつうかさ、オマエって野球好きだったっけ?」
トオル「知らなかった? こう見えてオレも横浜ファンなんだから」
達也「どうせ、美穂ちゃんって子が横浜ファンだからノッてるだけなんじゃないの? じゃあさ、横浜の監督の名前は?」
トオル「権藤(注1)……だっけ?」
達也「ホラみろ! そんなこっちゃあ、美穂ちゃんにはついてけないぞ」
トオル「中学校の頃ぐらいまでは結構観てたんだけどなあ。大魔神・佐々木、波留、畠山、駒田、進藤……」
達也「なんで引退した選手の名前ばっか出てくんだよ!」
トオル「そういえばさあ、達也のパパって高校の時、甲子園に出たことあんだよな」
達也「ああ。1回勝ったみたいだけど」
トオル「プロからお誘い来なかったのか?」
達也「なかったみたいよ。もともと音楽を聴いてるほうが好きだったみたいだし、端からプロになる気はなかったんだって」
トオル「へぇ~……っていうか、〈いつもの箱〉(注2)漁っていい?」
達也「ああ。テキトーに選んでよ」
トオル「ええっと……ん! なんだこりゃ!」
達也「どうした!」
トオル「なんか、古い写真が落っこちてた」
達也「どれどれ……あっ、これってウチのオヤジじゃん! あたりまえだけど、若ぇっ」
トオル「オレたちぐらいの歳かなあ。なんかさあ、クラブっぽいとこで撮ったみたいだけど、ジャケットの袖まくっちゃってさ、ずいぶん気合いが入ってそうだな(笑)」
達也「おまけにちょっと光沢入ってるし、スーツが(笑)」
トオル「そんじゃあ、そんな達也パパのセレクトしたテープ、本日はコレだーっ!」
達也「なになに……〈ダンシング・ヒーロー〉って? 誰の曲が入ってんの?」
トオル「ええっと、ピンク・レディーとか、田原俊彦とか……」
達也「今かかってんのがピンク・レディー? ふ~ん、TVの懐メロ番組で〈ユッフォー!〉とか観たことあるけど、うん、この曲はディスコっぽい感じだね。オトナっぽいし」
トオル「この田中美奈子って、Take2のどっちかと結婚した人だっけ?」
達也「それは田中美佐子だろ。いまだに間違えるやつがいるとはな」
トオル「荻野目洋子って、ちょっと前に〈はなまる〉に出てたの観たよ。昔の映像も流してたけど、ウチのオフクロの若い頃そっくりだった」
達也「へぇ~」
トオル「冗談だけど。ま、ウチのオフクロは〈荻野目〉言うより〈魚の目〉みたいな顔やねんけどな」
達也「なぜそこで、上方漫才?」
トオル「ほっほ~、B面は男性チームね」
達也「白組のトップは誰?」
トオル「たぁらとしひこです! ハハハハッ!」
達也「似てないことはないけど、オレら世代がやる物真似ではないような気がする」
トオル「うん、理解してくれてありがとう!」
達也「どういたしまして」
トオル「〈BAD〉っていうのはマイケル・ジャクソンの“Bad”と関係あんのか?」
達也「ん~、曲を聴く限りもろマイケルっぽい感じでははないけど、言葉のインスピレーションはマイケルだと思うよ。ジャニーズとマイケルって縁が深いからね」
トオル「へぇ~。ところで、〈日本のマイケル〉って言うと誰を思い浮かべる?」
達也「そうだなあ、やっぱ三浦大知とか」
トオル「まあ、そういう意見は当然あるだろうな。オレのなかでは三ツ矢雄二だけど」
達也「それって、マイケルJ・フォックスの吹き替えしてる声優さんじゃん! TV放映ヴァージョンの時の」
トオル「いかにも! あと、〈タッチ〉の上杉達也もこの人だね!」
◆達也……のほほ~んとキャンパス・ライフを送っている、今春から大学3年生。意中の愛ちゃんとは友達以上恋人未満。
◆トオル……達也のキャンパス仲間。最近コンパで知り合った美穂ちゃんにイレコミ中。意外と純情。
◆達也パパ……編集テープ作りが趣味の、ちょっと古風な音楽ファン。高校時代は甲子園に出場したこともある。
(注1)権藤……権藤博。98年に横浜ベイスターズを日本一に導いた監督。現役時代は中日ドラゴンズのエースとして活躍し、入団1年目の61年には年間35勝を挙げた。
(注2)いつもの箱……達也の愛車の後部座席に積んである〈いつもの箱〉には、達也パパが編集したカセットテープがいっぱい入ってるんです!!