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第44回 ─ アシッド・トラックス

名器……ならぬ名機! 気持ちいい世界を作り出すTB-303とは?

連載
Discographic  
公開
2005/07/14   16:00
ソース
『bounce』 266号(2005/6/25)
テキスト
文/石田 靖博

 通称〈303〉ことTB-303は、シンセサイザーの名門であるローランドから発表されたベース・シンセだ。もともとは同シリーズのリズム・マシーンであるTR-606(これも名機!)とセットでベースとドラムが演奏できるというコンセプトだったのだが、シカゴのDJピエールを中心とした3人組=フューチャーがたまたま壊れていた303をいじって出た変な音をそのまま使った“Acid Tracks”が〈世界初のアシッド・ハウス〉と認識されたことで、アシッド・ハウス=303の公式が定着した。あの独特のピキピキというか……ウニウニというか……いわゆるアシッドなサウンドは、ハードフロアが93年にリリースした文字どおりの〈TBの再生〉作『TB Resuscitation』によって大人気機種となる。発表された当時は安価(だからこそシカゴ界隈の貧乏な若者たちがトラック制作に使えたわけだ)だったのが、いきなり価格も急騰。しかも、その頃にはとっくに生産中止で絶対数が少なかったこともその異常人気に拍車を掛けてテクノっ子憧れのアイテムとなり、303の機能/音色を再現したシンセも多数登場することとなった。

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