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第65回 ─ 一十三十一

連載
360°
公開
2005/06/23   12:00
更新
2005/06/23   20:57
ソース
『bounce』 265号(2005/5/25)
テキスト
文/ダイサク・ジョビン

一十三十一が新作で〈シンクロ〉をやってるって……どういうこと!?


 コラボレート・アルバムとなった一十三十一(ヒトミトイ)の新作『Synchronized Singing』では、異才・鬼才たちによる先鋭的なトラックの数々と、彼女による地に足の着いていない浮遊感のあるオリジナルなメロディー、ひらめきが冴え渡ったイマジネイティヴな歌詞、そして可愛らしくてちょっぴりため息混じりの魅力的な歌声が奇跡的な融合を見せた、無限に想像力が広がっていくような、驚きと喜びに満ち溢れたまったく新しいポップ・ミュージックを聴くことができる。カラフルでドラマティックでキラキラとキラめきユラめくこの衝撃作が生まれるまでの過程をドキュメントしてみよう。

「去年のお盆に比叡山の延暦寺でライヴをやる前に、心身共に鍛えて清めて行けば、そこにあるいいエネルギーと循環できるだろうなって思ったんです。それで旬のものを食べて日の出と共に起きてっていう生活サイクルに変えたら、身体のなかも循環するし、世の中もグルグルと循環して回るっていうことが体感できて」。

 その循環に気持ち良さを感じた彼女はさらに、「アルバムを作る前に大きな衝撃が欲しくて、キューバに行ったんです。キューバは、不便だからいろいろなことが起こって逆にドラマティックだし、いま知り合った人とでもすぐに仲良くなるっていう〈オープン美学〉がある。それに、サインや物がないからこそ頭のなかで色や言葉や音楽といったイマジネーションがいっぱい溢れていて、みんなキラキラしてるし、パワーがものすごかった。子供からおじいちゃんまでが朝から踊ったり歌ったりしてるのもすごくポップな光景で、街並みもシャーベットみたいにカラフルですごいキレイなんですよ。それで、〈ファンタジックでマジカルでカラフルでシンクロ/コミュニケートしてて小学生も大好き〉っていうアルバムのイメージがバーッとさらに増していった」。

 ということで、帰国後すぐに彼女は、その膨大なイメージ/アイデアを具現化するために、「目の前にバァーンと川と空があるところに引っ越したんですよ。昼間は川面がキラキラ光ってて、朝方は対岸を走ってる車に太陽の光が反射してオレンジ色にキラキラと輝く。夜は対岸の夜景が川面にシンメトリーとなって映り込んでて一日中キラキラなんですよ、キラめいて、ユラめいて。そこでいいコード感とかが生まれてくるからワァーッて一気に曲を書いた」。

 精進料理を食べるようになって変わったという彼女から、『Synchronized Singing』について最後にもう一言。

「野菜の味は複雑でそれぞれ強い個性があるけど、このアルバムはサラダっぽい。みんな個性が強いんだけどお互いの持ち味を活かす、シンプルな味付けで」。

▼一十三十一の過去作を紹介