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第63回 ─ Breakthroughから始まるクロスオーヴァーなコミュニケーション

連載
360°
公開
2005/06/16   16:00
更新
2005/06/16   19:11
ソース
『bounce』 265号(2005/5/25)
テキスト
文/栗原 聰

Breakthroughが『BREAKTHROUGH』に至るまで


 パーティーは5年前に始まった。『リスペクト』で評価をアップさせていた頃、RhymesterのDJ JINは意欲的に音楽のフィードバックを求め、DJとしても知られるジャーナリストの荏開津広と共に東京・青山の老舗クラブ〈MIX〉(現在は一時休業)にてレギュラー・パーティーの〈Breakthrough〉を開始。ヒップホップを中心に、ソウルやファンク、ハウス、ダブなど、次に何がターンテーブルに乗るかわからないようなスリルがあり、プラスアルファを求める人間たちが集うパーティーとして知れ渡っていくようになる。やがて、黒いグルーヴを惜しみなくコネクトさせるDSK Invisible、Jazzy Sportを主宰するMasaya Fantasista、そしてDJ JINという3人が固まり、そのチームワークも自然に成長。プロジェクトとしての機運が熟していった。コンピ『HARLEM ver.2.0』への参加、『JAZZNOTJAZZ』のコンパイルなどで動きは具体化。このたびのファースト・アルバム『BREAKTHROUGH』へと至った。

 過去の音楽遺産のDNAを受け継いだフレッシュなサウンドが詰まった『BREAKTHROUGH』に大きなコンセプトはない。DJブースで自然に培われた3人の共通意識や感性こそがコンセプト。プログレッシヴ・ヒップホップの要素はたしかに豊かだが、やんちゃなミクスチャーではなく、Bボーイ・スタンスで筋が通った理想的なハイブリッド。現場感あるフィーチャリング・アーティストがサウンドをより濃密にし、インタールード的なインストも、スペイシーだったり、ファンキーだったりと個性に溢れ、アルバム全体の完成度を高めている。フェンダー・ローズやノード・リードといったキーボードや機材の多用も鍵。東の果てで生まれた温かさのあるロウなサウンドは、世界中どこの街で鳴っても違和感はない。飛躍や発見はブレイクスルーしてこそ始まるのだ。

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