音楽にこだわる渡辺信一郎監督を直撃!
渡辺信一郎監督の音楽に対する造詣はとても深い。YMOの洗礼を受け、映像だけでなく音楽にも並々ならぬ興味を注いできた彼は、エレクトロニカ、ダブ・ハウス、ジャズなどが最近のお気に入りというかなりの音楽フリークだ。なかでもクラブ・ミュージックに対する愛情は、彼の作品から窺い知ることができる。今回DVDがリリースされるTVアニメ「サムライチャンプルー」では、ヒップホップ/ブレイクビーツのアンダーグラウンドなシーンから圧倒的な支持を受けるクリエイターたちがサントラを手掛けている。依頼する際には、すべてのクリエイターと直接会って話し合ったそうだ。
「リクエストはあまり細かくしていません。絵の感じを見てもらい、自由にインスパイアされて作ってもらった曲を取り入れたほうが、広がりが出てくるような気がするんです。場合によっては、出来上がった曲に合わせてシーンを作ったりもします。単に〈発注して上がってきました〉っていうだけじゃない関係を作りたいんですよ」。
延々とループするサンプリング、ローファイなトラックにクリアなラップ、映像にシンクロしたスクラッチ――エクスペリメンタルな音楽的要素を、これでもかとばかりに盛り込んだこの斬新なアニメ作品に対して、楽曲提供者たちはその音楽の使われ方に一様に驚きを見せている。それは本人たちの意図とは違った形で使われている場合が多いからだそうだ。
「音楽って単純なものではなくて、決めつけられないものだと思うんです。例えばリズムが楽しそうな曲は、のどかに聴こえる時もあるけど、逆に寂しく聴こえる時もあるように微妙なものですよね。その曲が放っている匂いを聴き取れれば、いろんな使い方ができると思うんです」。
「サントラは、使われ方次第で善し悪しが決まってしまう」と話す彼だが、やはり個性派揃いのクリエイターたちには特徴があるそうだ。
「ファット・ジョンの曲はみんなメランコリックなんです。彼の人柄が出てますよね。FORCE OF NATUREはダイナミックかつミステリアスで映像的な曲が多いです。Nujabesさんに関しては、彼のロマンティックで繊細な感じが好きですね。tsuchieさんとは「カウボーイ・ビバップ」からの付き合いなんですが、彼はオールマイティーというかどんなものでも作ってくれます。音質にもこだわっていて、ビートを重視する今回の作品ではポイントとなっていますよ。MINMIさんの場合も、作品を観て、登場人物の境遇などを理解してくれたうえでリリックを書いてくれたので、うまくコラボレートできたと思います」。
今作のDVDリリースを大いに喜んでいる渡辺監督。徹底的に音楽にこだわった作品だけに、音質そのものにも注意して楽しんでもらいたいそうだ。
「ちゃんとしたスピーカーで、良い音で聴いてほしい。スピーカーのない人はヘッドフォンで! 良い音で聴くと、スネアとかベースの音とか全然違って別のモノに変身しますから(笑)」。
▼「サムライチャンプルー」のサントラを紹介