〈UKの巨大野外レイヴから受けた衝撃を日本に持ち込む〉という意図によりDJ MAYURIがたち上げた電子音楽の野外宴〈METAMORPHOSE〉。朝霧、富士と場所を移してきたこのパーティが今年は苗場に進出。トニー・アレン、アフリカ・バンバータなどリヴィング・レジェンドの出演、ドイツの超優良レーベル〈!K7〉ステージの設置など、今年もその突然変異は進行中の様子です。まずは予習盤で絶叫を!!!
THE ORB
『自転車と三輪車』 V2 (2003)
最近なぜか来日頻度がアップしてる気がするアレックス・パターソン。昨年は自身のレーベルからコンピをリリースしていたが、今回はおよそ2年ぶりとなるオーブの新作だ。今回はルーツ回帰的な印象もあり、シングル曲“From A Distance”のようにポップでフロア・ユースな雰囲気が濃厚。だからなのか、聴き終えた感想は妙に晴れやか。大御所らしさとそこに安住しない若さが感じられる良作だ。(高橋 玲子 / bounce 2003年07月号掲載)
MOUSE ON MARS
『Radical Connector』 ビクター (2004)
一聴して耳に飛び込んでくるのは、賑やかなほどのヴォイス・エディット──しかし、それこそが中心的なメロディーのフックを先導していく──と、カルシ ウム増量、その骨格に揺るぎがないヘヴィーなビート構築。前作『Idiology』から3年、ここにマウス・オン・マーズが広げる地平には、かねてより親 交の厚い第3の男、ドド・ンキシと、レーベル・メイトでもある才女、ニオベの断片化した歌声がつぎつぎと耳をくすぐる世界が横たわっている。〈口を開き、 自由に発声する〉という政治的なステートメントのように見える点でも、グループ史上、もっとも口数の多いアルバムに仕上がっているけれど、単に〈饒舌な音 楽〉なら山ほどある。それよりもむしろ、〈饒舌〉そのものを音楽化したところに、マウス・オン・マーズならではの知性とユーモアが感じられるロボット・ ファンク・アルバム。なんて心強い!(福田 教雄 / bounce 2004年08月号掲載)
TONY ALLEN
『Home Cooking』 Comet (2002)
クエストラヴも憧れる、フェラ・クティを支えたドラマー、トニー・アレン。その新作は冒頭の“Every Season”からブラーのデーモン・アルバーンと、ビッグ・ダダ所属のMC、タイをフィーチャーするなど、ファン層をさらに拡大しそうな作りだ。特にタ イは“Woman To Man”や“Jakelewah”でも入魂のラップを披露、その本気ぶりが伝わってくる。5曲あるラゴス録音の曲にもロンドンやパリで手を加え、そこで活 躍するのは、裏方に徹しながら、音色にも気を配るアンサング・ヒーローズ。パリ録音を仕切ったのは以前の作品にも参加していたドクターLだが、そんな1曲 “What's Your Fashion”にもエスカ(ニュー・セクター・ムーヴメント)が参加、とゲストは実に豊富だ。“Crazy Afrobeat”なんて曲もあるけれど、いつになってもそのドラミングは唯一無二。ベースは気心の知れたセザール・アノットだし、このリズム隊に乗れば鬼に金棒。(高橋道彦 / bounce 2002年09月号掲載)
ROVO
『LIVE at 日比谷野音 2003.05.05 ~MAN DRIVE TRANCE SPECIAL~』 wonderground(2003)
まさに狂喜乱舞!! 日本最強のトランス・ロック・バンド=ROVOによる、日比谷野音での 超絶ライヴを完全収録したアルバムが2枚組で登場。野外であるゆえの解放感と、鳴り響くギター、炸裂するツイン・ドラム、揺らめくヴァイオリン、トビまく るシンセの嵐と、熱狂的な観客の歓声が織り成す驚愕の音世界! 時空を越えて、宇宙の彼方にまで到達するほど、7人の鬼神が創り出した壮大なるドラマを体感せよ!!(郡司 和歌 / bounce 2003年11月号掲載)
DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN
『Structure Et Force』 P-VINE (2003)
リスナーの度肝を抜いた強烈リミックス・アルバムや、真骨頂であるカオス炸裂の激烈ライヴ・アルバムもヤバ すぎでしたが、ついに待望のセカンド・アルバムが登場。大友良英の脱退を乗り越えてメンバーもパワーアップ。総勢14人の凄腕ミュージシャンたちがギリギ リのテンションで産み落とす圧倒的なグルーヴ感がとにかく凄い。バンマスである菊地成孔を筆頭に、よりゴージャスに進化した彼らから今後とも目が離せない! (ケチャ / bounce 2003年10月号掲載)
HIFANA
『FRESH PUSH BREAKIN'』 felicity (2003)
シーケンサーを使用せずにサンプラー(もちろんMPC2000ね)のパッドを叩き、そのビートにリアルタイムでスクラッチやパーカッションをミックスして いくフィジカルなライヴ・パフォーマンスと、スキルに裏打ちされた緻密なトラック・メイキングで吉祥寺の夜を熱く盛り上げてきた KEIZOmachine!とジューシーによる完全手動ブレイクビーツ・ユニット、HIFANA。彼らのデビュー・アルバムが遂にリリースされた。 LeyonaやDJ KENTARO、PROFESSOR CHINNENら多彩なゲストと共に、ヒップホップからR&B、ドラムンベース、はては沖縄調の歌モノまでと、どのナンバーも踊り出さずにはいら れないほどの躁気質が全開! 音楽で遊ぶことを知り尽くしている男たちが生み出した、サイッコーにオールド・スクールでファンキーでフレッシュ!な一枚。 さらに思いっきり盛り上がれるDVD付きときた日にゃ、買わなきゃ損ってもんです!(ケチャ / bounce 2003年12月号掲載)
REBEL FAMILIA
『REBEL FAMILIA』 POSITIVE PRODUCTIONS (2003)
安心して聴けます??とある〈パンク〉と呼ばれるバンドに対するファンのコメント。マジか よ?(ぼくの素直な感想)。ダブもまたしかり、かな。様式美、それはそれで美しいと思う瞬間もあるが、ダブの初期衝動、目的が〈元ネタをバラして再構築? スリリングな即興解体〉にあったことを思えば、明らかにそれは〈退化〉であるという気もする。表現の軸をその初期衝動に秋本武士が置いている(もちろん仮 説だが)、と考えると、GOTH-TRADと結成したREBEL FAMILIAとしての、このファースト・アルバムで展開されている壮絶なビートや、不協和音のぶつかり合い、そしてあくまでも即興?解体目的としか思え ないダブ的なミックスも、必然のように思えてくる。セックス・ピストルズからPILへと向かったジョン・ライドンの姿が、ぼくのなかではREBEL FAMILIA(秋本)と重なる。ライドンは肉声で叫んでいた。ここに肉声はないが、叫びはあるよ。(鈴木 智彦 / bounce 2003年4月号掲載)
J’S BEE
『anemone』 K.S.R. (2004)
揺らめく音像と儚い歌声が生む至福の空間美……。名古屋在住のプログレッシヴ・ジャズ・バン ド、J'S BEEのミニ・アルバム。ジャズをルーツにしながらもスティールパンやストリングスを採り入れたことによって民族音楽的でサイケデリックな世界が現出して いる。美しくもダウナーなメロディーと高揚感を煽るアグレッシヴなサウンド、そして細胞の隅々にまで染み込むような音の粒が快楽的な世界へと誘う。極上の トリップ作品!!(郡司 和歌 / bounce 2004年04月号掲載)
SUPER COLLIDER
『Raw Dights』 Rise Robots Rise (2002)
クリスチャン・ヴォーゲルとジェイミー・リデル──孤高の異端児2人がその世界を具現化したサウンドと、シーンの主流がリンクしつつあるイマだからこそ、の3年ぶりの新作。幾何学的な印象を持つスペイシーなバック・トラックに、それと対極をなすソウルフルなヴォーカルが、独特な深みをもたらす。ますますクロスオーヴァー化してゆくシーンの先端を担う、フューチャー・ソウルのひとつの形。ハーバートも参加。(蓮田由希 / bounce 2002年6月号掲載)
※METAMORPHOSEへの出演はジェイミー・リデルのみ。
GREEN VELVET
『Whatever』 MUSICMAN (2002)
変態シカゴ・ハウス大王、カジミアさんがグリーン・ヴェルヴェット名義で久々に新作をリリース。グリーン・ヴェルヴェット節であるエフェクトが効きまくっ た演説(?)は絶好調どころかゆるーく歌モノ寸前まで進行。トラックはお馴染みズンドコ・シカゴ・ハウスが炸裂、そのなかにもドイチェ・エレクトロに共鳴 したようなシカゴ・エレクトロ(?)もあり。変態ながら独自の進化を遂げたフォロワー皆無の唯我独尊作。(石田靖博 / 2001年11月号掲載)