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第49回 ─ 多様性を深めるR&Bを堪能するなら、インディー・アーティストに注目すべし!!

RAHSAAN PATTERSON 本当にやりたくてやっている、ってことさ

連載
360°
公開
2004/07/29   17:00
更新
2004/07/29   17:13
ソース
『bounce』 256号(2004/7/25)
テキスト
文/荘 治虫

 ヒップホップと同じように、R&Bは流行に敏感な音楽だ。やれフューチャリスティック・ビートが流行りだとか、ジャジーな生演奏ものがキテるとか、今度は南部系のサウンドだとか、そのスタイルの移り変わりはとにかくめまぐるしく、多くのシンガーたちは新しいサウンドを身に纏うことに忙しい。それがR&Bを刺激的な音楽たらしめているとも言えるわけだが、一方で、独自のスタンスを貫くことで強固なアイデンティティーを確立するシンガーもいる。

 そんな、流行とは別の次元で勝負できるアーティスト、ラサーン・パターソン。10歳に満たない頃からTV界で子役としてデビューし、以降、シンガーとして、またブランディの初期のヒット“Baby”などのソングライターとして音楽キャリアを積み重ね、ソロ・アルバム・デビューしたのが97年のこと。線は細いながらどうにも胸がキュンとしちゃうエモーショナルな歌声に心奪われた人も少なくないはずだ。にもかかわらず、彼のアルバムは今回でようやく3作目。これにはレーベル側の問題が関係している。本来はもっともっと早くに『The Best』という新作がリリースされるはずだったのだが、なんとデビュー以来所属していたMCAが閉鎖してしまったのである。

「君の言うとおり、『The Best』は『After Hours』のことだよ。確かにMCAにいた頃に制作されたアルバムさ。マスターをそのまま移行して、『After Hours』としてインディーからリリースできたんだ」。

 今回のアルバムは日本ではBrownsugarから、UKではドームからリリースされ、本国であるアメリカは「いまのところ9月のリリースを予定しているんだ」とのこと。いずれにしてもインディー・ベースのアーティストとなったわけだ。

 最近ではラファエル・サディークやマイロンなどメジャーからインディーへと移行しているR&Bシンガーが少なくないが、ラサーンの場合はMCAで制作したものをインディーでリリースするという形態が特殊とも言える。つまり、音はメジャーそのものの高クォリティーということだ。実際、当然のことながら今回のアルバムは、前2作にまったく引けを取らないどころか、それらを上回るほどの出来栄えに驚かされる。

「このアルバムのコンセプトは、いままでと同様、ぼく自身の新たな面を知ってもらうということだよ。リスナーのみんなに、いままでの作品にないぼくの一面を体感してもらうためだね」。

 この〈新たな面〉のひとつが、80年前後のディスコを思わせるサウンドが素晴らし過ぎる“So Hot”だろう。彼にしては珍しく思いっきりアッパー(それもすごく爽快!)に振れた曲なのだ。

「そのとおり、80年代のサウンドを狙っていたよ。ぼくはとってもノスタルジックで、ぼくには音楽がとっても重要なんだ。音楽が作れるからこそノスタルジックな気分になれるし、故意であろうがなかろうが、その時代や影響を受けたアーティストに敬意を表すことができるんだ」。

 アッパーとはいえ、そこはラサーン。洗練された独自のカラーが失われないのは頼もしいところだ。プロデュース面で彼を支えるのはジェイミー・ジャズやヴァン・ハントといった腹心の面々であり、その意味でも従来からのファンを裏切るようなことはありえない。

「ラサーン・パターソン・スタイル=ぼく、としか言いようがないな。ぼくの音楽やスタイルは、単にぼく自身を表しているわけだから」と自己分析するように、彼は決して時代に媚びることなく素直に自分を表現する。それはまさしくインディーらしい生き方だ。「インディーのアーティストとは、音楽と芸術を心の底から愛し、やらなきゃいけないからじゃなく、本当にやりたくてやっているってことさ」と語るラサーン。これからも変に流行りに流されることなく、本当にやりたい音楽を作り出してくれるに違いない。

▼ラサーン・パターソンのアルバムを紹介。

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