77年――ロンドンは燃えていた。それはパンクがもたらすスリルと興奮、若者たちの衝動と情熱ゆえ、ロンドンという都市は熱く燃え上がっていたのだ。そして2004年の今、もはやお茶の間レヴェルにまで広く浸透した〈○○パンク〉という言葉。その〈パンク〉と呼ばれる音楽が、なぜ僕らを熱くさせるのだろう?という疑問同様に、昨今の〈パンク〉にどうしても違和感を感じてしまう部分があるのはなぜだろう……。やっぱり、その〈始発点〉を忘れちゃいけない。
NYで灯されたパンクの火が、マルコム・マクラーレンの手によりロンドンに渡ったのが75年頃。彼の経営するブティック〈SEX〉の名を冠したセックス・ピストルズの登場が、旧来の価値観から世界の音楽地図まですべてを塗り替えるのに多くの時間は必要なかった。そして、クラッシュ、ダムド、ジャム、ストラングラーズ、ジェネレーションX、バズコックスなどなど、無数の個性豊かなバンドが巨大なウネリを生み出したわけだ。どうしてもファッションや過激な言動ばかりに目が行きがちだが、いちばん重要なのはやはり音楽であり、その〈スピリット〉である。当時すっかり形骸化し若者の手から離れてしまったロックをもう一度自分たちの手に取り戻したこと、〈自分たちでもできるんだ!〉と思わせたことこそが、パンク最大の功績だと僕は思う。自由な発想による破壊と再構築、その後に生まれる新しい〈興奮〉――そう、不可欠なのはコレだ。そして今回、そんなパンク本来のスピリットを思い出させてくれるトリビュート盤『LONDON PUNK 1977 Tribute Album』がリリースされることになった。KEMURI、LOW IQ01、CICADA、Oi-SKALLMATESなど、〈パンク・スピリット〉を継承しつつも、各方面で多彩な活動を展開するアーティストによって、さまざまな解釈で料理された本作。こいつをキッカケに、参加したアーティストたちに話を訊きながら、その原点を見つめ直し、奥深い77年の〈ロンドン・パンク〉の世界をザッとおさらいしてみよう。