LAURNE オリジネイターの新境地
昨年来日したインディア・アリーに取材した際、筆者はコーラス・メンバーとして帯同していたローネイにも会っているのだが、その自律の効いたアーティスティックな佇まいは何というか……真のアーティストだった。先天的な全身芸術家、とでもいうか、彼女が演るのはモードとしての〈オーガニック〉ではない。ルース・エンズ、アレステッド・ディヴェロップメント(AD)と世界的なグループを渡り歩き、女優業も経験。ソロでメジャー・デビューを果たした直後にその場を辞し、みずからのソウルに忠実な音楽だけをマイペースに紡ぎ続けている……。このたびリリースされた4作目『I Remember』がまたも素晴らしいのは言うまでもないが、今作が過去作ともっとも違うのは、彼女が多くをセルフ・プロデュースしている点だ。これまでオマーやアリ・シャヒード、スピーチらを起用してきた彼女だが、今回のサウンドはシンプルでいて、その幅はいままで以上に広い。そして、そこに乗るのがパーソナルな言葉の数々。まるで彼女の日常が目に浮かぶようなごく自然な心の移ろいがそこにはある。
「そのとおりよ。そうあるべきだと思っているし。普段の生活でメロディーを口ずさんで、パッと言葉が浮かぶこともある。その出来が良かったら、その場で録音することもあるわね。詞のアイデアも似たような感じで、自然に浮かんだものをゆっくり温めることは多いわ」。
また、みずからの影響下にある自作自演型の女性シンガーたちを多く起用している点も興味深い。公私ともに大親友だというインディア・アリーとのコラボレートは頷けるものだが、ダヴィーナやアンジェラ・ジョンソンの参加にはちょっと驚いた。
「みんな長年の知り合いよ。ダヴィーナは98年から知り合いだし、アンジェラはグループ(クーリーズ・ホット・ボックス)でアトランタに来た時、元夫のDJケミットが同じイヴェントに参加していたのがきっかけで知り合った。彼女はケミットとも曲作りをしていたから、私たちの家にも来ていたの」。
元夫……そう、AD時代からの付き合いで必ず数曲をプロデュースしてきたケミットとは離婚してしまった。前作『New Territory』と今作の間にある最大の違いは、そうした環境の変化だったのかもしれない。
「ええ、前作の時は個人的にいろいろあって憂鬱で、それが作品に出たように思うんだけど、今回はそれを乗り越えてハッピーな気分で仕上げられたわ。自分でプロデュースして書いた曲も増えたから、そういう意味でも達成感はあるわね。いろいろな面での成長が反映できたと思っているの」。
そのソウルの向かう先が、またも楽しみになってきた。(出嶌孝次)
▼『I Remember』に参加したアーティストの作品。
ダヴィーナの98年作『Best Of Both Worlds』(Loud)