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第26回 ─ EMINEM & 50 CENT CRUSH IN DA CLUB!

連載
360°
公開
2003/07/10   16:00
更新
2003/07/10   16:40
ソース
『bounce』 244号(2003/6/25)
テキスト
文/小林 雅明

エミネム率いるシェイディ・オールスターズが襲来!! そして世界を獲った50セントも驚愕の初来日!! そのとき、その場所は世界でいちばん熱かった!!!

すでに大物の風格、50セント


50CENT

奴らがやって来た! そう、エミネム率いるシェイディ軍団だ! しかも、来日ヒップホップ・アーティストの単独公演としては、過去最大級の規模となった幕張メッセでのライヴ2日目には映画「8 Mile」も日本全国で封切られるという絶好のタイミング。また、エミネムの熱狂的なファンならずとも、この週には“21 Questions”を全米チャートのトップに送り込み、アルバム『Get Rich Or Die Tryin'』がアメリカで売れに売れている50セントのパフォーマンスが早くも観られる、と期待してライヴ会場に足を運んだ音楽ファンも多かったに違いない。

 すでに報じられているように50セント“In Da Club”の歴史的な大ヒットは、ヒップホップ史どころかポピュラー音楽史にさえ残るものとなった。このヒットの要因について、50自身はこう分析する。

「誰でも誕生日ってのはあるだろ、そう考えて書いたんだ。スティーヴィー・ワンダーの“Happy Birthday”のヒップホップ・ヴァージョンさ。ヒップホップっぽく〈Go shorty, It's your birthday〉ってな」。

ちょっと待った、50! “In Da Club”のサビのいちばん最後は〈And you know we don't give a fuck it's not your birthday!〉となっているし、曲の内容そのものと誕生日は、もちろんまったく関係ない。

「曲っていうのは、歌い出してから6秒で決まる。“Wanksta”でも〈I got a lot of living to do before I die/And I ain't got tyme to waste〉と始めて、誰に向けられた曲かハッキリさせてる。その段階でリスナーがその曲を聴き続けるかどうかが決まる。だから、俺は曲の最初から興味を喚起するように書いてるんだ」。

 こうした実に冷静な受け答えにも表れているように、目の前で落ち着き払った調子で喋る50にはすでに大物の風格が漂っていた。そして、その発言には皮肉が込められている。たとえば、もはやお馴染みとなったマーダー・インクとの確執について「いまはアシャンティがNo.1の殺し屋だ。でも、アシャンティを相手にはしたくないな」という言い方で、ジャ・ルールにはもう人気がないことを突くように。

「だいたい、奴はR&Bシンガーだし、男女間のことばかり言ってる。“Wanksta”が誰に向けられた曲なのかみんなわかってるだろ? ディス曲なのに、世界中で聴かれる曲。そういうのは奴には書けない」。

 話しながら時おり口の端に浮かべる冷ややかな微笑みのように、50セントからはクールというよりは、ニヒルなオーラが放たれていた。