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第15回 ─ マヌーシュ・スウィング

連載
Discographic  
公開
2003/06/12   16:00
更新
2003/06/12   17:45
ソース
『bounce』 243号(2003/5/25)
テキスト
文/田辺有朋、牧野孝彦、吉村 健、乱いっけい

映画「僕のスウィング」のヒットなどで俄然注目度急上昇中のマヌーシュ・スウィング。ヨーロッパの哀愁と情熱、そして洗練が詰まった最高に贅沢なこの音楽は、マヌーシュ・スウィングの元祖であるジャンゴ・ラインハルトの没後50周年である今年、さらなる盛り上がりを見せることは間違いない。さぁ、オシャレで楽しいマヌーシュ・スウィングの世界にみんな集合だ!!

受け継がれていくジャンゴ・ラインハルトの魂

そもそもマヌーシュ(フランス北部~ベルギーにまたがる地域で生活しているジプシー)系プレイヤーによってはじめられたマヌーシュ・スウィング(ジプシー・スウィングとも呼ばれる)。映画「ギター弾きの恋」「僕のスウィング」のヒットもあり、ノスタルジックにしてフレッシュな魅力も持つそのサウンドがいま新たに人気を集めている。

器用な手先を持つ〈ジプシー〉と呼ばれるヨーロッパの不定住民族たち。彼らが生業のひとつとしたのが大道音楽、ストリート・ミュージックだ。1930年代フランス――そんな土着的なジプシー音楽にアメリカ生まれのジャズを採り入れ、より洗練を究めた新しい音楽を作り出した男がいた。彼こそがジャンゴ・ラインハルト。マヌーシュ・スウィングの開祖たる伝説的ギタリストだ。ザクザクと刻まれるリズム・ギター、瑞々しいヴァイオリン、そして乾いた音色で哀愁と情熱を帯びたメロディーを紡ぎ出すギター……。その音楽は時代を超えて聴くものを魅了してきた。

そんなジャンゴの影響力はジャズ周辺に留まらなかった。ジェリー・ガルシア(グレイトフル・デッド)はジャンゴ信奉者として知られ、マンドリン奏者であるデヴィッド・グリスマンとともに60年代にはサンフランシスコからジャンゴ再評価の先鞭を付けている。また、ご存知EGO-WRAPPIN'がみずから立ち上げたレーベルに、ジャンゴの名曲そのままである〈Minor Swing〉という名前を付けていることにも注目しなくてはいけない。昭和歌謡、ジャズ、スカなど多彩なテイストを含み、独特の退廃感を持ったEGO-WRAPPIN'のサウンドの下地にジャンゴの魂が刷り込まれていることは間違いないだろう。

今年はジャンゴ没後50年にあたり、新たに現代の視点から選曲された編集盤が続々リリースされるなど、さらなる盛り上がりを見せているマヌーシュ・スウィング。ビレリ・ラグレーン、チャヴォロ・シュミット、ロマーヌといったジャンゴの音楽を現代に受け継ぐ凄腕ギタリストたちの熱いプレイ、軽快にスウィングする弦楽器のハーモニーがひたすら気持ちいいマヌーシュ・スウィングを今回はご紹介しよう。(田辺有朋)

▼このたびリリースされるジャンゴ・ラインハルトのベスト盤を紹介