ところが日本では使えない
ところでこのサービス、アメリカ国内向けであって、日本では使えない。クレジットカードの登録地がアメリカ国内でなければ、世界中どこにいてもこのサービスは受けられない。それ以外のユーザーにできることは、わずか30秒間の試聴だけなのだ。
これは実に悔しい。iTunesの画面を見ていると、私の頭の中には、30年ほど前の音楽的状況がフラッシュバックしてくる。洋楽の新譜発売は大抵数ヶ月遅れ。しかも国内発売があるだけマシで、マイナーなアーティストは輸入盤でも手に入らず、あったとしても価格はベラボーに高い。だから日本のディスクジョッキーの仕事は「向こうで買ってきた」レコードをうやうやしくかけることであったし、そもそもラジオでロックのような音楽は滅多にかからなかった。
そういう情報格差のあった時代を思い出し、その後の進歩とは何だったのかについて考えていると、なんだか暴れたくなってくる。このままではカードの不正取得やコピーのような犯罪、ダウンロード購入を狙った書面上のみの国際結婚、ギブミーカードと口々に叫びながら米国の繁華街を練り歩く日本人ツアー客の横行、その他の社会問題が多発するのではないかと思うと、私は心配でならない。
というのは嘘で、試聴だけでも結構楽しいので、Macユーザーの方はぜひ試していただきたい。
しかし、こうした問題はAppleのサービスに限らず、世界中のどの音楽配信サービスでも同じで、どうしても各国、各地域でのローカルサービスにならざるを得ない。インターネットを使ったサービスなのに、何故そうなるのかと言えば、音楽の販売契約が国別に異なるからで、簡単に言うと縄張りのようなものがあるのだ。
したがって日本でiTunes Music Storeを使えるようにするには、日本の販売会社(つまりレーベルを管理しているレコード会社)と個別に交渉しなければならない。今までの常識で言うなら、それを成功させるには革命でも起きなければまず無理だ。Appleの日本法人も国内向けのサービスを検討しているというが、やはり時期について明言していない。
ところがアメリカではその革命が起きてしまったわけだ。伝わるところによれば、スティーブ・ジョブス(Apple創業者の一人)が1年以上もかけて、ネチネチと音楽業界関係者を説得して回った結果らしい。ならば日本にもジョブスのような熱血野郎がいれば、まったく期待ゼロというわけでもない。というか関係者の方々には、ぜひなんとかしていただきたい。