NEWS & COLUMN ニュース/記事

第8回 ─ 音楽配信に起こった革命、Appleの「iTunes Music Store」

連載
デジタルミュージックガイド
公開
2003/05/22   13:00
更新
2003/05/29   21:01
テキスト
文/四本 淑三

ジリ貧状態の音楽配信に起こった革命、Appleの「iTunes Music Store」。2週間で約200万曲という怪物的な売上を記録したこのサービス成功の理由はどこにあったのか? 今回はその秘密に迫ります。

iTunes Music Storeの衝撃

有料音楽配信なんて、このままジリ貧になって消えてゆくのかと思っていたところに、まさかの逆転満塁ホームラン。

Appleの音楽配信サービス「iTunes Music Store」は、4月28日のサービスインから1週間で約100万曲を売り上げ、さらに2週間目には200万曲に達したとAppleは発表した。

私の周囲では、連休明けの話題といえば白装束集団とこれで持ち切りという状態。サービス開始の発表直後には、これでダメなら音楽配信なんてもうあり得ないだろう、なんていう話までしていたが、まさかここまで成功するとは。

iTunes Music Storeは、MacOS用のプレイヤーソフト「iTunes 4」を使って、5大メジャーレーベルが提供する約20万曲をダウンロード販売するサービス。他のサービスと比較してコピー制限が非常に緩く、CD-Rにはいくらでもコピーできるし、iPodという最強の携帯プレイヤーが使える魅力もある。


iTunes Music Store

しかし、今のところMacintoshのみの限定的サービス。そして1曲99セントと、決して安いとは言えない価格がどう評価されるのか、そこが注目のポイントであった。先行するRhapsodypressplayなどのサービスは定額料金制であり、大量に音楽を聴きたいのならAppleのサービスより割安感があるのだ。

ところが、市場シェア3%程度に過ぎないMac向けのサービスが、これらWindows向けサービスを圧する数字を出したわけだ。一方のRhapsodyやpressplayは、100万曲のダウンロード達成に1ヶ月以上を要しているのだ。これらのサービスは開始直後の楽曲数が少なく、定額制のためダウンロード数とユーザーの支払いが一致しないなど、単純にAppleのサービスと比較できないところもある。それでもAppleの出した数字は、そうした条件差を無視できるほどのものであり、うまくやれば音楽配信は儲かるのだと誰もが思っただろう。

この成功事例を目の前にして、他が動かないわけがない。今までオンライン配信に冷淡だった音楽業界の対応も違ってくる。Appleは今年中にWindows向けのサービスを始める予定というが、果たして今後激しく変化していくだろう状況に先行できるのかどうか。