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第6回 ─ P2Pネットラジオの大本命「PeerCast」のしくみ

連載
デジタルミュージックガイド
公開
2003/03/13   12:00
更新
2003/03/20   17:59
テキスト
文/四本 淑三

今回はP2Pネットラジオの大本命「PeerCast」の詳しい使い方をご紹介。音楽の楽しみ方を広げるツールとして役立つこと間違いなしのこのPeerCast。未体験の方はぜひ試してみてはいかが?

ネットラジオはつまらない!?

 ネットラジオの世間的評価は必ずしも高くはない。いや、はっきり言って低い。できれば聴きたくないとさえ思われているらしい。というのもつい最近、学生と思われる男子2名のこんな会話を耳にしてしまったのだ。
 
「夕べ研究室で徹夜しちゃってさー。でもあそこってラジオもテレビも何もないじゃない」
「そーだなぁ。CDとかMDとか持ってなかったわけ?」
「ナシ! 結局ネットラジオしか聴くものなくてさー」
「うへー、それ悲惨だなぁ」

 おいコラ! 何が悲惨だ! とネット生活二十有余年のオジサンは突っ込みたかった。なにしろネットラジオが聴ける環境なんて、少し前までなら特権的なものだったからだ。ちっとは感謝せんかコラ! とはいえブロードバンドの常時接続が当たり前になった現在、言われてみれば私だってネットラジオなんか聴いちゃいなかったのだ。理由は極めてシンプル。つまらないのだ。

 ダメラジオの最たるものは、好みのジャンルや年代を入れると「そんな貴方が聴きたい曲はこれだ!」とばかりに自動選曲してくれるタイプ。最初は確かに面白い。だが少しでも変な曲がかかると、なにか馬鹿にされているようで腹が立ってくる。おまけにこのサービスが成り立っているのも、どこかのシステム屋さんがちょちょいとプレゼンした結果なのだろう。なんて想像できたりするから余計に、音楽をナメんなよ! という気分が高まり精神衛生上よろしくない。
 
 といったような個人的な事情はさておき、一般的にネットラジオがつまらないのは、誰もが自由に番組を作れる土台がないからだ。その土台とは、まず法的なものだ。日本では著作権処理が極めて面倒で、事実上ネットで音楽を自由に使えない状態にある。また、かの自由の帝国アメリカですら、ネットラジオ局に対し著作権使用料の支払いを課すと言いはじめ、それがあまりに高額だったため、弱小局がバタバタと潰れていった。いずれにしてもメジャー系楽曲をネタにしていては、満足に番組を作れないのだ。

 しかしながら「だったら結構! むしろありがとう!」と私は言いたい。少なくとも地上波でイヤというほど流れている曲を、ネットでまで聴きたいとは思わない。この事態を建設的飛躍のチャンスとさえ思っている。もしネットワーク発の、なにかしら音楽ムーヴメントのようなものが生まれるのだとしたら、多分こういうきっかけで始まるしかないのだ。

 つまりコンテンツは自分で作ればいい。それで法規制の問題は完璧に解決できるのだ。ホームページに自分の写真や文章を載せるのと同じように、ネットラジオでは自分の曲をかければいいだけだ。放送すること自体は法規制を受けないし、自分の曲をどう使おうが他人にとやかく言われる筋合いもない。インターネットのコンテンツはインターネットのユーザーが作る。コレが基本だ。基本に立ち返ろう! ただ、そうした放送がすべて面白いかといえば、多分聴くに堪えないものの方が多い。しかし、それはまさに個人のwebサイトと同じ事情で、面白いものもあればつまらないものもあるというだけの話だ。

 ただ個人でネットラジオを始めるには、技術的なハードルが高い。まず回線の確保が大変だ。ブロードバンドとはいっても、ADSLはダウンロードが速いだけ。放送の送信に使う上りの帯域は非常に細く、ネットラジオのサーバーを立ち上げたとしても、同時にアクセスできるリスナーはせいぜい数人が限度だ。光接続もいまのところ地域限定サービスでしかない。それに太い回線が手に入ったとしても、サーバーの設定や維持管理は、なかなか素人の手に負えるものではない。