ハリー・スミスの音楽を演奏していると、本当に心が落ち着く
──Cheskyから出しているブルースのアルバムでは、主にジャズで育ったアーティストを起用していますが、一緒に演奏するアーティスト達をどうやって決めたのですか?
このプロジェクトは、ニューヨークにある「Bottom Line」というナイトクラブのオーナー、アラン・ペッパーが、クラブの30周年を祝うショーをやってくれ、と依頼してきたときに始まったんだ。当初は、ハリー・スミスをテーマにした1回きりのライブの予定だった。
それまでの2年間、『Buster's Spanish Rocket Ship』を完成させるためにキューバ音楽を学んでいたせいもあって、作品が出来たあとに、昔のカントリー・ブルースのアルバムを引っ張り出して聞き始めたときは、本当に新鮮味があったね。初めて聞くかのように。このラテンミュージックの経験は、僕を発展させてくれた。もっとも、どんな音楽的経験にしてもそうだけどね。
こうした経験を踏まえて、なにをやりたいのかを僕の専属ギタリストで、コラボレーターでもあるBrian Kooninに相談したら、Larry Saltzman (ギター)、Kermit Drescoll (ベース)、Joey Baron (パーカション)、そしてKeith Carlock (ドラムス)を紹介されたんだ。きっとジャズの素養がある連中ってのは、この手の音楽の真髄に触れるのがうまいんだ。逆にロックの連中は、ブルースを演奏すればどれも同じような音にしてしまうんじゃないかな。 ポインデクスターと一緒に演奏したことのある連中はたいていジャズあがりだから、彼らとは波長が合うんだ。
──これらの楽曲を、今年はいつどこで演奏する予定ですか。
この音楽を演奏しているときっていうのは、心が落ち着くんだ。時間が止まってしまったかのように。だから、できるかぎり演奏したいね。ハリー・スミスものを聞きたいって人がいる場所なら、どこででも演奏するよ。
──昔のブルースやフォークソングが口コミで広がったように、また結果として歌詞やコードにもいろんなバリーエーションができてしまうように、楽曲を少しでもいじるようなことはありましたか。
意図的には変えてない。ただ、多くの楽曲にベースやドラムを加えたから、すごく変わったように聞こえるかもしれない。それに、歌詞が拾えないときは、自分で作ってしまったしね。
──アルバム『Shaker』には、死をテーマにした楽曲が多く収録されていますが、このテーマに、なぜそれほどまでに惹かれたのですか。
『Shaker』は、昨年の9月11日のテロ事件の直後にレコーディングしたんだ。当時のニューヨークでは、死に対する無秩序な空気が流れていた。またそれとは別に、人っていうものは年齢を重ねるごとに、生死に興味をもつものだしね。