彼女の音楽は、紛れもなくロックだった
エタ・ジェームスは、かなり大柄の女性として知られてきたが、64歳の今となっては、膝の障害もあって、立っていることもままならない。僕がライブで彼女を見たときは、ゴルフカートのようなものに乗って登場した。しかし、座ったままでも、大声で唄い、ファンキーになれるのが彼女である。もちろん、今よりも大きかったときもある。報告によると、体重が300ポンド(約136kg)を越えた時期もあったそうだ。実はこの体重、遺伝性のものかもしれない。父親の顔を見ずに育った彼女は10代のときに、父親が実は伝説のビリヤードの達人、ミネソタ・ファッツであると母親に聞かされる。実際対面したときには、彼はそれを肯定も否定もしなかったが、エタ本人はそれを事実と確信した。エタは現在、息子たち──DontoとSametto──をバンドに迎えてパフォーマンスを続けている。その息子たちの父親にあたるのがアーティス・ミルズ、70年代はじめのころのエタのボーイフレンドである。薬物使用で一緒にいるところを逮捕され、罪をかぶった彼は、その後ハンツビルの監獄で8年間服役した。彼が釈放された後、テキサスのナイトクラブで偶然出会い、ふたりは結婚したのだ。
薬物=ドラッグでどん底をみたエタだが、なんとか立ち直り、アラン・トゥーサン、クリス・ブラックウェル、ジェリー・ウェクスラーといった、友人でもありファンでもある力強い支持者たちの支援を得て、職業復帰することに成功した。それでもエタは、いつも自分独自の活動をしてきた。たいていの人は彼女の音楽をR&Bと呼ぶだろう。しかし、彼女の音楽は紛れもなくロックでもあり、「Rock and Roll Hall of Fame」(=ロックの殿堂)入りしているし、あのチャック・ベリーの曲(のいくつか)ではバックボーカルを務めたこともある。他には、カントリー、ゴスペル、ブルース、それからジャズも演奏する。どんな音楽であっても、自分のものにし、揺るぎない信念と情熱をこめて魂から聞かせる。それがエタ・ジェームスなのである。