キースが数十年来愛聴し続けてきた黒人女性シンガー、エタ・ジェームズ。今回の「SONICALY SPEAKING」では、彼女の波乱に満ちた人生と、唯一無二の音楽について紹介する。
今年3月、僕の長年の夢がかなうことになった。数十年間ファンを続けてきたアーティスト、エタ・ジェームスの実物のライブを見たのだ。僕の年代ぐらいの人の多くがそうであるように、エタ・ジェームスとの出会いは間接的なもので、僕の場合、エタのヒット曲のひとつ“Tell Mama”をジャニス・ジョプリンがカバーしたのがきっかけだった。
僕が高校生だった頃の音楽ファンたちは、よく好きなアーティストの作品のライナーノートをチェックして、彼らの音楽的ルーツを探ったりしたものだ。例えば、ローリング・ストーンズのファンであればマディ・ウォーターズを発見したり、ビートルズ・ファンであればリトル・リチャードを新しく知ることになった。
チキン・シャック(のちのフリート・ウッドマックのボーカル、クリスティン・マクビーがボーカルを務めていた)バージョンのエタ・ジェームスの楽曲“I'd Rather Go Blind”で彼女を知った英国人も少なくない。このバージョンでは、彼女自身も製作に加わっている。何年か後、この曲はロッド・スチュアートのアルバム、『Atlantic Crossing』の中で、これまたすばらしい演出のもとで、再生を果たしている。
ローリング・ストーンズも彼女のよきファンで、1978年のツアーでは、いくつかのオープニング・アクトを依頼したほどだ。それから、1984年のオリンピック大会でも彼女はパフォーマンスを披露している。最近のファンなら、このアーティストをクリスティーナ・アギレラ経由で知った人もいるかもしれない。というのも、ライブではエタの楽曲“At Last”を歌ったり、どれだけエタに惚れこんでいるかを公言したりしているからだ。この曲は、最近では映画やコマーシャルにも起用されていて、結果的にUKチャートに食い込むことになった。僕はこれらのカバーはどれも気に入ってはいるのだけれど、やはりオリジナルのエタ・ジェームス・バージョンほど、虜にされるものはない。