King Gnu、Red Bullとのコラボ・シークレット・ライヴは東京湾に浮かぶ歴史的な人工島「第二海堡」で開催。7月22日にライヴ映像の一部とビハインド・ザ・シーン公開決定。オフィシャル・ライヴ・レポートも到着

(C)Suguru Saito / Red Bull Content Pool
Red BullとKing Gnuのコラボレーションによるシークレット・ライヴ「Red Bull Secret Gig」(レッドブル・シークレット・ギグ)が、東京湾に浮かぶ歴史的な人工島であり、洋上の要塞として知られる「第二海堡」にて行われた。「第二海堡」は国有の施設として普段厳重に管理されており、大規模な機材を運び込んでの音楽ライヴの開催は、今回が史上初となる。
4月下旬より「シークレット・ライヴ会場を探せ」と始まった企画は、応募総数13万件以上という形で大好評の結果に。そのうち、最終的に約7万人がライヴ会場を突き止め、そのうち抽選応募に当たった60名が6月5日に行われた現地ライヴに参加、惜しくも抽選には漏れたがライヴ会場の正解にたどりついた約7万人が7月4日にオンライン配信でライヴを視聴した。
ライヴ会場を探す過程では、会場を突き止める手掛かりとして、異なる方角を向いた「拡声器」のヴィジュアルが日本全国の30ヶ所に続々と出現し、その画像はRed Bull JapanとKing Gnuの公式Twitterアカウントから連日で投稿が行われた。これは「それぞれの拡声器が地理的にライヴ会場の方向を向いている」という仕掛けになっており、ソーシャル・メディア上で盛り上がりを見せた。また、シークレット・ライヴ映像の一部と、制作の舞台裏に密着したビハインド・ザ・シーンの公開も決定。公開予定日は7月22日となり、Red Bull TVから視聴できる。
また、オフィシャル・ライヴ・レポートも到着している。
人生でたった1度きりの、心に焼きつく体験――。もちろんすべての時間は繰り返されることはなく、あらゆるライヴが1回限りのものであることは間違いないのだけれど、それにしても、今回行われたレッドブルとKing Gnuのコラボレーションによるシークレット・ライヴは本当に特別なものだった。なぜならば会場となったのは海の真ん中に浮かぶ無人島。自由な立ち入りは禁止され遺跡以外は何もない小さな島に、このひと時だけのためにゼロからステージが作られ、ライヴが開催されたからだ。過去、この場所で音楽を歌い鳴らしたバンドは存在しない。そんな場所で、2021年6月5日、幸運な60名の観客を前にKing Gnuはライヴを行った。
「Red Bull Secret Gig」とは、これまで世界6ヶ国で10回以上にわたり実施されてきた、レッドブルが仕掛けるシークレット・ライヴ・イベントだ。King Gnuとタッグを組んでの日本初開催となった今回は、まず4月末から約1ヶ月にわたって、全国各地に「会場を示すヒント」が隠された拡声器ヴィジュアルが掲出。見事その謎を解いた正解者の中から抽選で60名だけが現地へと招待され、さらに後日、謎解きの正解者約7万人がオンラインという形でこのライヴを目撃した。
会場となったのは東京湾にぽつんと位置する「第二海堡」。観客は2便に分けて、横須賀市三笠ターミナルからRed Bull Secret Gig仕様の小型フェリーで来島。真夏のような陽射しを受けて真っ青な海を行く、日常を脱する片道30分の航海の時点ですでに、この先に待ち受ける体験へのワクワク感が否応なしに高まっていく。第二海堡は現在のような重機もなかった明治中期、国防のために当時の最新技術を集め、四半世紀の時をかけて建造された人口島で、現在の海洋土木技術の礎になっているという歴史的な遺構でもある。360°見わたす限りの海に囲まれたこの島に、なんと1週間前から船で資材や機材を運び込み、ステージを設営。シルバーに鈍く光る骨組みに数え切れないほどのミラーや拡声器が配され、荒地にそびえるその佇まいは、どこかディストピアに建てられた秘密のアジトのような趣きがあった。
1便目到着から2便目の到着まで、レッドブル・ダンサー、レッドブル・アスリートを含む豪華パフォーマー陣によるブレイクダンス、フリースタイル・フットボール、ダブルダッチのセッション・パフォーマンス「Red Bull Street Jam」が行われたあと、すべての観客が上陸を遂げた15時40分、いよいよKing Gnuのライヴがスタート。周辺に配されたドラム缶に次々に火が灯され、辺り一面に白煙が立ち込めていくなか、悠々とステージに上がったメンバー。常田大希(Gt/Vo)がギターをつま弾き、勢喜遊(Dr/Sampler)がタイトにリズムを刻み始め、そこに新井和輝(Ba)が弾き出すぶっとい音が乗った瞬間にグルーヴが完全着火、1曲目の“千両役者”へと突入した。アグレッシヴな躍動感をもって歌を放っていく井口理&常田大希のツイン・ヴォーカル含め、ソリッド且つ爆発力のあるダイナミックな演奏で一気に沸点を超えていく。そのままさらにギアを上げ、“Sorrows”へ。ステージ全体からバシバシ火炎が上がり、黒煙が溢れる。荒野に浮かぶ蜃気楼のように非日常な光景の中で、けれど、その煙の匂い、肌に伝わる熱気、そして何よりもバンドが鳴らす血の通った爆音のすべてが、これがリアルな体験であることを確かに実感させる。
続けて“傘”から“McDonald Romance”と、ポスト・ジャンル時代の先端を開拓し続けてきたこのバンドならではのしなやかでユニークな音楽観が、心地よくステージから空へと解放されていく。特に“McDonald Romance”の絶妙にタメの効いた抜群のグルーヴと儚くも美しい井口の歌は、シチュエーションも相まって世界に取り残されたラヴ・ソングのように響いた。
短いインターバルを挟み、“飛行艇”へ。重心の低いどっしりとしたビートに乗って雄大に景色を切り開いていくこの楽曲、火炎の上がり方もハンパなくて、メンバーが目視できないくらいに燃え盛る炎と黒煙の向こうから強靭なバンド・サウンドが轟いてくる様は圧巻。「代わり映えがしない日常の片隅で/無邪気に笑っていられたらいいよな」、そして「命揺らせ 命揺らせ」というシンプルなフレーズに込められた想いと意志が、あらゆる日常が崩れた2020年以降の状況と重なって今まで以上に強く胸を打つ。黒煙が赤煙へと変幻するなかで繰り広げた“Slumberland”は、まさに混沌の時代に新たな価値観を打ち立てて突き進むKing Gnuというバンドを体現するようなパフォーマンス。もはや「メンバー、この煙の中でよく演奏できるな」というくらいの、通常のライヴ会場では絶対に実現不可能な光景が目の前に展開しているわけだけど、それでも少しも揺らぐことなく鬼のように精度の高い熱演を繰り広げるKing Gnu、やはり只者ではない。
狂騒極まるステージから一転、常田による静謐なピアノ・ソロへ。上空を横切るヘリコプターの音がむしろ外界と隔絶されたこの場を際立たせるように感じられるなか、始まったのは“The hole”だった。とても繊細で美しい、けれど、地を這うような新井のシンセ・ベースの響き含め、次第に重厚な熱量が増していくこのバラードは、痛みを抱えながら理不尽な世界の中に生きるひどく脆く不確かな存在である我々を掬い上げるような、親密で切実な響きをもって届く。今この状況だからこそひと際強く響いたその瞬間は、全曲ハイライトと言えるほど印象的なシーンに満ちていた今回のライヴにおいても、ひとつの白眉だったと言っていいだろう。
その後、再びステージが白煙に包まれたかと思いきや、タンクトップと赤いハーフ・パンツに早着替えした井口が登場。となれば、演奏されるのはもちろん“Teenager Forever”。いつも以上にノリノリで飛び跳ね踊りまくりながら歌う井口に、常田が歌いながら思わず吹き出す一幕も(笑)。King Gnuのディスコグラフィの中でも最も青春性の強いストレートなロック・チューンが、爽快に痛快に転がっていった。
本編ラストは“サマーレイン・ダイバー”。幻想的なオルタナティヴ・サウンドと透き通ったメロディが溶け合う、どこか讃美歌のような神秘的な響きを宿した名曲が、果てのない空へとどこまでも美しく伸びていく。夢幻と現実の境界が揺らぐようなその音像は、まさに1度限りのこのシークレット・ライヴのエンディングに相応しいものだったと思う。ステージを去るときのメンバーが笑顔に満ちたものすごくいい表情だったのも印象的だった。彼らにとっても、きっとこんなライヴ体験は二度とないだろう。
2日後にはすべて撤収され、再び何もない、ただ砲台跡だけが静かに佇む島となった第二海堡。けれど2021年、パンデミックによって世界が大きく揺れ動く過渡期のなかで、King Gnuがこの場所で初めてその音楽を歌い鳴らしたという事実は決して消えることなく、また歴史の一部となっていく。今回のRed Bull Secret Gigは、その演出含め、前人未到のフィールドを自身のヴィジョンで切り開いていくKing Gnuらしい、1度限りの素晴らしいアートでもあった。

(C)Keisuke Kato / Red Bull Content Pool

(C)Suguru Saito / Red Bull Content Pool

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(C)Suguru Saito / Red Bull Content Pool

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(C)Suguru Saito / Red Bull Content Pool
カテゴリ : タワーレコード オンライン ニュース
掲載: 2021年07月05日 18:25








