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インタビュー

矢野沙織

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年10月15日 12:25

ソース: intoxicate vol.100(2012年10月10日発行号)

取材・文 渡部晋也

「“子役”として生きていくんだろうな…と思っていました」

「デビュー10周年なんで」という話にちょっとビックリした。現役高校生でバリバリ吹きまくる女の子がデビューという話に、あるベテラン・プレイヤーによる「これだけブラスバンドに女の子がいるんだから、若い女子プレイヤーがどんどん出るだろう」という予言が現実になったなあ、と思ったのを憶えている。そこから10年経った。

その矢野沙織が目の前にいる。すごく大人っぽく、フェミニンになって目の前にいる。ラフな格好でナチュラルメイクな10代のイメージを持っていたから、本来ならここでも驚くべきだけど、ウェブサイトなどでスタイリッシュに決めて演奏する彼女の姿を“予習”してあったので、それほどのけぞらないですんだ。

さて、そんな彼女の10年。本人としてはどのくらいの速度感で過ごしてきたのだろう。

「ディレクターに上手いこと見つけてもらってデビューしてからは早かったですね。周りの人にも恵まれたので、大船に乗ったかんじでいましたから。むしろそれ以前、14歳で活動を始めてからデビューまでがものすごく長かった印象があります。ブラスバンドで楽器を始めて、まあ体格が良かったのでそこそこできたんですね。そして14歳の頃にわかりやすくグレて(笑)。頭も良くないからどうしようと親に相談したら、悪い学校行くなら働けと言われて。結局勉強して行きましたけど(笑)。サックスは吹いていたのと、本が好きでチャーリー・パーカーとかビリー・ホリディの自叙伝とかマイルスとか読んでいました。ジャズってものすごく不良の音楽なんだ、と思いました。そのうちに自分からライブハウスに出かけていって出演交渉をして。でもそれってほんの数日から数週間の出来事なんですね。でも永遠に長かった印象ですね」

そして16歳でいきなりリーダー・アルバムをリリースした矢野だが、周囲が平然としているわけはない。それは本人が一番解っている。

「当時は、面白がって良くしてくれる人、私のことをめちゃくちゃ嫌いな人。そしてギャラが出るから来てくれる人。その3パターンしかない(笑)。嫌いな人はバークレーメソッドも受けていないから下手だとかだいたい同じこと言うんです。それでCD出して活動しているなんてあり得ない、とね。まあこっちは「へー」って感じです。確かに全てのキーで演奏できる必要はあるでしょうけれど、パーカーのフレーズも、パーカーがやり易いキーでしか出てこない。だからそれでいいじゃん、っていうようなことを早々に思ってました。そのうちに(市原)ひかりちゃんとか小林香織ちゃんとかが出てきて、ああよかったと思いました。ひかりちゃんとはいまでもすごく仲がいいです。二人で会えるジャズミュージシャンっていなかったので、すごく安心しましたね」

こうして順風と逆風が入り交じる中、矢野は開き直りともとれる態度で自分を捉えていたようだ、

「活動を始めた14歳の頃から“子役”」として生きていくんだろうな、って思っていました。だからちゃんと仕事しようと思って、あえて制服で仕事に行ったし。レコード会社は“本格派”を掲げたかったんでしょうけれど、“子役”だから今だけのもの。次はないっていつも思いながらレコーディングしていましたね。当時はむちゃくちゃ無理言ったんです。NYでジミー・コブとやりたいとか、ジェームス・ムーディを呼んだらランディ・ブレッカーとジミー・ヒースがいないとレコーディングできないとか。ともかく今だけだから言っておこうと思って(笑)。でも意外と実現できましたが、こうして二十歳になって廃れればいいさ、って思っていました。今のうちだけだ、って想いは今も持っています。でも私はタイミングがいいんですね。二十歳になって「もう終わるな」と思っていた時期に、ゴールドディスクをいただいたりCMがとれたり、首の皮一枚でつながった、という感じでした。だからシフトチェンジが楽だったんでしょうね」

なんとなく刹那的過ぎる気もするが、彼女のアグレッシヴな演奏と態度を見ていれば“終わり”が来る気配は無い。しかも最近の矢野は、ちょっとレトロ感があってフェミニンな魅力を前面に出したファッションで決めてステージに登るという、大胆なイメージチェンジを果たしている。実に粋なその姿に、思わず感心するほどだ。

「最近ですよ。こういったファッションは前から好きですが、エイミー・ワインハウスがすごい好きで、ああいう格好でやりたいなと思って。衣装はオーダーですが、気が合う人が見つかったことも大きいですね。でも昔は結構みんなこうでしたよね。日野さんもアイビーで決めていたし」

ジャズが本来持っている格好良さや不良っぽさ。矢野の演奏にはそういった要素が目一杯詰め込まれているような気がする。10年でこれだけやるのだから、さらに続ければどうなっていくか。これは同時代を生きる聴衆として一番の楽しみだといえるだろう。

『SAORI YANO TOUR 2012 "Answer"』

11/18(日)福岡・Gate's7
11/20(火)大阪・Billboard Live Osaka
11/21(水)名古屋・Blue Note Nagoya
12/5(水)東京・STB139
http://www.yanosaori.com/

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