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インタビュー

Superfly 『Force』

 

ライヴ、ライヴ、ライヴ!のエネルギッシュな季節を経て届けられた4枚目のアルバム『Force』──そこに漲るのはかつてないレヴェルの熱量と胸のすくような解放感だ!

 

 

今回はホント、さらけ出したかった

前作『Mind Travel』が発表されたのは、昨年の6月。リリース同日には、横浜・赤レンガ倉庫にて2万人を集めたフリー・ライヴを敢行。同月末から10月にかけては過去最大となる全国32か所でのツアーを、12月には埼玉、名古屋、大阪でアリーナ・ツアーを開催──と、ライヴ三昧で2011年を締め括ったSuperfly。それは、次のステップを踏み出すにあたっての大きな活力となる、エネルギッシュな日々だった。

「ライヴ・モードがずっと抜けない感じだったので、次のアルバムはこのハイテンションのまま作れないかな?……って、最初はスタジオでライヴ録音したいなと思ったんです。でも、ライヴってお客さんがいないと成立しないし、お客さんの手拍子とか声援とかでリズムを作っていくものだったりするじゃないですか。ライヴの主役はお客さん……なので、出来上がった新しい曲だけでツアーを回って、アルバムと同じ曲順で披露して、っていう流れをスタジオ盤とは別に作ろうと思ったんです」。

ニュー・アルバムは『Force』。ブルージーなツイン・リードのイントロで昂ぶらせるタイトル・チューン“Force”を幕開けに、スピーディーに繰り出されるビートの上をドライヴィンなギターとクールなヴォーカルが並走していく“Nitty Gritty”、ミステリアスなジャングル・ビートを掻き分けてハイテンションなクライマックスへと昇天していく“No Bandage”──と、冒頭の3曲を聴いただけでもよりシンプルでよりキャッチー、直感的に聴き手の心を揺さぶる、まさにタイトル通りの〈力強さ〉を伝えてくれるアルバムだ。ファンクラブ・ツアー限定でお披露目されたリリース前のライヴ音源は初回限定盤のみに添えられるスペシャルなものだが、スタジオ盤においても、そのパッションは十二分に伝わってくる。

「とにかくロック・アルバムが作りたい!って(コンポーザーの)多保(孝一)君に伝えたんですけど、彼は〈自分のなかにロックはない〉とか言いはじめて(笑)。何をいまさらって感じなんですけど、作曲家なので、ライヴをして、私みたいにエモーションを直に体感することってないじゃないですか。だから、どうしても頭で音楽を作ってしまうようなスタイルになってしまってたと思うんです。それでも私はもっと衝動で作ってほしかったので、〈もっと気持ちで作ってよ!〉って言ったりとかしましたね(笑)。あとは、いままで60sとか70sの音楽を参考に、そういう雰囲気を出せたらいいなあって作ってきたところもあるんですけど、そういうのを一回取っ払って、多保君がリアルタイムで熱くなった音楽、〈青春時代にウォーッ!てなったあの感覚を思い出して!〉みたいな、そんな暑苦しい感じでミーティングを重ねました(笑)」。

そんな建設的なぶつかり合いを経て完成をみた『Force』。レコーディング・エンジニアに三好敏彦を迎え、よりライヴ感重視のサウンドに仕上げられたアルバムは、サウンド面においてもさることながら、越智志帆が紡いでいく言葉もこれまで以上に……それは、〈攻めてる〉というよりも〈自身の魂を解放している〉と言ったほうがしっくりとくる〈強さ〉に溢れたものとなった。

「今回はホント、さらけ出したかったんです。それはライヴをやって思ったんですけど、いままで自分の気持ちを上手く伝えられなかったり、自分の弱さとか本音を見せるのが怖かったりとか、〈見ないで!〉って思うことがあったりとか、そういう気持ちをごまかしてるのも嫌だったんですね。うまく伝えるのが苦手っていうのは性格的な問題もあると思うんですけど、でも上手くやりたいっていう自分のなかの葛藤がすごくあったんです。で、まずは作品から、自分では隠しておきたいなあって思う部分もさらけ出してみようと。そうすれば、ステージでは嫌でもさらけ出せる、解放されるんじゃないかと思って、そうすればもっとお客さんもライヴを楽しんでくれるかなって、それは大きなテーマとしてありましたね」。

 

ロックなんだけど涙が出てくる

自分自身の解放──は、彼女のヴォーカルからも如実に感じとることができる。冒頭の3曲をはじめとするパワフルなナンバーだけならず、それとは逆方向の性格を持つスロウ曲──“輝く月のように”“終焉”“The Bird Without Wings”──でも。そこから溢れ出る熱情やピュアネスといったものはより深みと色合いを増し、聴き手の耳元へと寄り添うように紡がれていく。

「バラードでも震えるとか熱くなるとかっていうものを表現できたらいいなあって思ってたんですけど、“Nitty Gritty”とかですごくネガティヴなことを思いっきり歌えたので、その反動でポジティヴなことも歌いやすかったし、“終焉”では思いっきり暗くなれたし(笑)、気持ちを解放しやすかったですね。なんか、いろんな感情が素直にポンポンポンと出てきやすかったですね。聴いてくれた人のことも解放できるようなアルバムになればいいなと思います」。

極めてシンプルに言うならば〈本能的〉なアルバム。そんな『Force』には前述した楽曲のほかに、パフォーマーとしての自信と覚悟を謳った“愛をくらえ”、ブギー調のファンク・ナンバー“平成ホモサピエンス”、タイトルからしてまさに!なハード・チューン“Get High!! 〜アドレナリン〜”、グルーヴィーなベースラインにマッドチェスターの匂いも漂う“919”、スタジアム・ロック級のスケール感とラスト・ナンバーに相応しい至福感を持った“スタンディングオベーション”──と、パフォーマーとしてのタフさを見せつけながら、聴き手にグイグイとコミットしてくる楽曲が並ぶ。

「思わず汗が出てくるし(笑)、ロックなんだけど涙が出てくる。そういう感覚は初めてで、自分自身をさらけ出して書いてるっていうこともあるんですけど、出来上がったアルバムを改めて聴いてそういう心境になるっていうことは、伝えたいことをちゃんと色濃く含ませることができたんだろうなって……うん、なんか泣けるんです」。

 

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2012年09月12日 18:00

更新: 2012年09月12日 18:01

ソース: bounce 347号(2012年8月25日発行)

インタヴュー・文/久保田泰平

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