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インタビュー

赤い公園 『透明なのか黒なのか』

 

 

ルーペの向こう側に立ちすくんでいるのは4人の女子。ステージ衣装でもある白装束に身を包んだ彼女たちは、〈赤い公園〉という風変わりな名前のロック・バンドだ。顔はぼんやりと……第一印象、誰もが謎めいたイメージを持つことだろう。

「(白装束は)なんとなく演奏が上手く見えそうだし、ステージの照明にも映えるかな?って。衣装があったほうが気合いが入るし、そもそも普段着には自信がなくて(笑)」(津野米咲)。

このたび、ミニ・アルバム『透明なのか黒なのか』でメジャーの舞台に躍り出た赤い公園。謎めいているのは、見かけや名前だけじゃない。いちばんの謎は、彼女たちが何を考えてこういう音楽を鳴らしているのか、だ。変則的なビートとエッジーなギターを絡めながら繰り出されるそのサウンドは、高校の軽音楽部で結成されてから2年足らずのバンドとは思えない、あまりにも独創的な色味を放っている。

「最初のころは4トラックのハンディ・レコーダーに〈食器のドラム〉をまず入れて、そこにベースとギターを重ねていくっていうやり方でデモを作ってたんです。アレンジと歌詞とメロディーはほぼ同時に浮かんで……最初は結構爽やかな感じの曲が多かったんですけど、バンドで合わせるとぜんぜん爽やかにならない(笑)。とくに彼女(ベースの藤本ひかり)がゴリゴリの音を出すので、曲の傾向もだんだんとそれに浸食されていって。私はこのバンドで初めてオリジナルを作ったんですけど、自分の作ったフレーズが、〈それなりに〉どころじゃなく思い通りにならないんです。でも、むしろ個性的だなって気付いてからは、もう一曲作りたい、もう一曲作りたい、って感じになりましたね」(津野)。

「最初はもう、先輩(津野)が持ち込んできたものをやるっていうだけで、変わったことをやろうっていう意識はなかったんです。でも、だんだんと〈あれもやってみよう!〉ってことになっていって……」(藤本)。

「たぶん、私たちがめっちゃ正確に叩くし弾くしだったらできなかったんだろうなって。クセとかで自然と入れやすい音を鳴らしてしまう。何も知らなかったぶん、すんなりこうなったと思います」(歌川菜穂)。

さながらプログレ・バンドのような予想外の展開をみせながらも、3~4分程度の〈ラジオ・サイズ〉で編まれている楽曲群。激情のなかにも一種独特のファンタジアを秘めた歌声、豊かな情感を湛えたメロディーライン、フックの効いた歌詞が交わることによって個性をさらに際立たせるそれは、聴き手の頭んなかを〈?〉と〈!〉で掻き回しながら、心を躍らせてくれる。

「ヴォーカルはこのバンドが初めて。小学生のころはモーニング娘。になりたかったんです(笑)。J-Popとディズニー音楽が好きだったので、バンドの音楽とかあまり聴いてませんでしたね。私の声の良さは、私より米咲先輩のほうがよく知ってると思います。いつも引き出しを開けてくれてありがたいなあって、そこが赤い公園をやってて楽しいところですね」(佐藤千明)。

「私、アイドルが好きなんですよ。イマドキのも好きだし、聖子ちゃんとか昔のも。なので、作詞家さんが書く詞が好きなんです。例えば、この曲ってこういうことを歌ってる、って説明しているようなものは嫌い。説明できてしまったら、それはポエムにすればいいことだと思うし、言葉は言葉でも、歌詞であることに意味がある、歌であることに意味があると思うんです。最終的に何のこと歌っているのかってのはよくわからなくてもいいと思ってるし、なんとなくこんな画が浮かぶなあとか、それは人それぞれ違ってもいいし……」(津野)。

5月には、『透明なのか黒なのか』と対を成すもう一枚のミニ・アルバムが用意されている。そちらは今作よりも「キラキラした感じ」(津野)になるらしく、さらに頭んなかを掻き回してくれそうだ。

 

PROFILE/赤い公園


高校の軽音楽部で先輩後輩だった佐藤千明(ヴォーカル/キーボード)、津野米咲(ギター)、藤本ひかり(ベース)、歌川菜穂(ドラムス)によって2010年1月に結成。地元である東京・立川のライヴハウスを中心に活動を展開する。同年12月には、神聖かまってちゃんが主催するイヴェントにも出演。その後は都心でのライヴも増え、2011年3月には自主制作によるミニ・アルバム『ブレーメンとあるく』を発表する。同年10月に、NATSUMENらとカナダ・ツアーを敢行。その後も、話題性の高いアーティストとの対バンを果たしながらじわじわと知名度を上げ、このたびメジャー・デビュー・ミニ・アルバム『透明なのか黒なのか』(EMI Music Japan)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2012年02月15日 17:58

更新: 2012年02月15日 17:58

ソース: bounce 341号(2012年2月25日発行号)

インタヴュー・文/久保田泰平