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インタビュー

環ROY 『BREAK BOY』

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2010年03月17日 18:01

更新: 2010年03月20日 22:16

ソース: bounce 319号 (2010年3月25日発行)

インタヴュー・文/澤田大輔

 

それで自由になったのかい? カテゴライズから逃れた誇りとカテゴリーへの執着をごちゃ混ぜにしてぶちまける、このうえなく直球のラップ・アルバムが登場したぞ!

 

環ROY -A

 

クロスオーヴァーする存在感

独自のタイム感でしなやかに飛び跳ねるライミング。あらゆるビートを乗りこなし、どんな現場にも飛び込んでいく活動スタイル。このたびセカンド・アルバム『BREAK BOY』を発表した環ROYは、そんな自在のスキル&フットワークを個性にしてさまざまな境界線を飛び越えるクロスオーヴァーな活躍を見せてきたラッパーだ。しかしそのキャリアを紐解くと、2006年の初作『少年モンスター』は、日本語ラップに際限ない愛情を注ぎ続けるDa.Me.Recordsからのリリースだったりする。つまり、彼も出発点においては生粋のヒップホップ・プロパーだった。

「ヒップホップには15歳からどっぷり浸かってましたね。20歳でラップを始めたんですけど、その時には日本のラップ・カルチャーやクラブ産業が確立されていたから、僕もその流れに乗っかって活動してました。何人かで集まってイヴェントをやってライヴを観てもらう、みたいな。そこからダメレコの人たちと繋がっていって」。

しかしアルバム・デビューと前後して、シーンの画一的な価値観に対する違和感も徐々に生まれてきたのだという。そんな時、後の活動へと繋がるダンス・ミュージックとの邂逅があった。

「ひとつひとつクリシェを踏襲していったうえで勝負しないと評価されないことに対する疑念はありましたね。僕はUSのラッパーみたいなハードコアでマッチョな属性は持ってないし、真似することもできない。そこをどうクリアしていくのか、あるいはクリアしないのか……そんなことを考えていて。でも、この頃にヒップホップ以外のいろいろなパーティーに行くようになって、自然とダンス・ミュージックに惹かれたんだと思います」。

そんな「モラトリアムで見聞を広げる時期」を経て、環ROYは2008年5月からの1年半足らずの間に5枚のコラボ作品を発表。fragment、Eccy、DJ YUI、Olive Oilというヒップホップの周縁で先鋭的な挑戦を試みているトラックメイカーたちのビートを渡り歩き、5作目ではNEWDEALとタッグを組んでテクノ/エレクトロにも接近してみせた。こうした大胆極まりない音の変遷を考えれば、ソロでの新作がヒップホップのフォーマットからは大きく逸脱したものになる可能性もあっただろう。しかし実際に届けられた『BREAK BOY』には、音の手触りこそエレクトロニックで硬質なものが多いものの、Bボーイの琴線をダイレクトに刺激する腰の据わった野太いビートが揃っている。純然たるラップ・アルバム……あえてそう形容したくなる魅力を本作は湛えている。

 

そういうことを言う係

「コラボした5枚には、僕のスタート地点であるヒップホップのシーンにあまり理解されていないなという思いがあったんです。隣町に行くと〈おもしろいね〉って言ってもらえるんだけど地元には届いてない、みたいな感じ。だから今回はコラボ作で培ってきた表現を用いつつも、ヒップホップのプロパーにも伝わるものにしたかった。特に3、4、5曲目なんかは、その傾向が強いと思います」。

その4曲目はタイトルからして“J-RAP”であり、ストレートに投げかけられたメッセージはともするとシーンに対する揶揄に映るかもしれない。しかし注意深く聴けば、そこには深い愛情も絡み合ったアンビヴァレントな気持ちが込められていることがわかる。

「日本のラップに対する思いってのは話しはじめると長くなっちゃうし……複雑というか。ただヒップホップの人たちも、シーンのなかだけでやってちゃダメだってのは絶対気付いてる。なのに、いろんな音楽の人たちといろんな場所で遊んでるヤツってあんまり思い浮かばない。それってヒップホップの在り方が狭い所に閉じこもってしまっていることを象徴してると思うんです。俺はそういうことを言う係なのかなと」。

一方で、仲井戸麗市“BGM”をカヴァーしたり、“go! today”ではフィッシュマンズの詞を断片的に引用することで、かのバンドのアンニュイな世界観を踏襲してみせたり……といったユニークなアイデアも随所に投入され、定型のヒップホップにはない振れ幅をアルバムに与えている。しかしこれらの趣向もまた、環ROYの考えるヒップホップの提示なのだという。

「RIOW ARAIさんや何人かの方には、既発のインストを提供してもらってるんです。そういう使い回しのビートにラップを乗っけた曲とか、カヴァーとか、サンプリング的な詞の引用とかをフラットに混在させている。こういう行為自体がヒップホップ的だと思うんですよね。例えばジョン・ケージが無音の〈4分33秒〉を〈これは音楽だ〉って言い張って音楽の枠組を広げたみたいに、僕も〈こんな切り口もヒップホップでしょ〉ってのをどんどん提示していきたい。そういう意味で〈BREAK BOY〉ってタイトルを付けているんです。このアルバムが僕のBボーイ観というか」。

ジャケットに映る彼は、気負いのない佇まいで悠然と前を見据えている。その視線の先にジャパニーズ・ヒップホップの新たな可能性が、この音楽の辿るべき道筋があるのかもしれない。

 

▼関連盤を紹介。

左から、七尾旅人×やけのはらのシングル“Rollin' Rollin'”(felicity)、RIOW ARAIの2009年作『Number Nine』(disques corde)

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