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インタビュー

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 繊細なサンプリング・ワークがフィジカルなグルーヴを獲得し、深化し続けるビートはそのままコズミック・ワールドへと突き進む――。鬼才ラッパーたちから絶大な信頼を得る新進ビートメイカーより、みずからの作風を一気に更新した新作が到着!!

自分の分岐点になったアルバム

――今年の頭に『Narcotic Perfumer』がリリースされた時のインタヴューで、今回の作品についてもちらっと訊いたら「いろんな怒りをぶつけたアルバム」っていう話をしてましたよね。でも、完成したアルバムを聴くと、そこはやや軌道修正したのかなって。

「そうですね。あの段階でもう、アルバムはほぼ完成してたんです。でも、ダークだけど聴きやすいと思って作ってたものが、冷静になって聴いてみたら、ちょっとドープすぎたというか、暗すぎて。〈これは、怒りは感じられるかもしれないけど、(多くのリスナー層に)広まるのかな?〉っていう不安があったので、わりと聴きやすく変えたんですよ。その前の名残りも、6~7曲ぐらいは入ってますけど」

――じゃあ、怒りっていうテーマは変わってない?

「音楽業界全体への怒り、いい曲がなぜこんなに広まらないのか、っていうことに対する怒り……そういう〈思い〉自体はそんなに変わってないですね。自分の生み出したものだけじゃなくて、自分の好きなアーティストが売れなかったりとかすると、こんなカッコいいことやってるのに何で? もっと広まってほしいのに……って思ったり。そこでアルバム制作が始まって、結果的にこういう感じになったっていう」

――ビートの面では、ファースト・アルバムからグッとサンプリングの比重が変わってて。

「そうですね。収録曲に流れがあって、前半部分はサンプリング・ミュージックが多い。サンプリングのヒップホップを作りはじめてから5~6年経って、いまはこういう感じになったよ、みたいなのを示しました。後半部分はわりと最近作った曲が多くて、これからの自分のヒップホップというか。だから、ちょうど自分の分岐点になったアルバムだと思いますね」

――それは、音楽を続けていくなかで考えも変わってきたっていうことですか?

「考えというか、音楽の趣味がだいぶ変わってきた。元々曲を作りはじめた時は普通のヒップホップとかアンダーグラウンドなヒップホップがすごい好きでよく聴いてたんですけど、最近はダンス・ミュージック全般やUKの最新モノをチェックしたりとか、あとフライング・ロータスやハドソン・モホークに代表されるインスト・ヒップホップのシーンとか、ワープものを全体的に聴いたり」

――そうなると、ヒップホップに対する距離感も当然変わってくるでしょうね。

「もちろん好きなんですけど、他の曲を聴いてるってことは必然的にヒップホップを聴く時間が少なくなる。ヒップホップだけをやってるクラブにもあんま行かなくなって、やっぱ踊ってるほうが楽しいじゃん!って思ったり。それでもたまにウータン(・クラン)とかギャング・スターを聴いたりして、〈すげえカッコいいな〉と思うことはもちろんありますけど」

――だからこそ、曲作りも変わってくる。

「そうですね。最近はそういう影響を受けて、シンセだけで作ったりとか、変なビートでやったりとか、っていうことを意識してますね」

カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2009年09月16日 18:00

更新: 2009年09月16日 18:01

文/一ノ木裕之