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インタビュー

JORDIN SPARKS

品行方正な〈アメリカン・アイドル〉から先へ……十代最後の夏、待望のニュー・アルバムで恋の戦場へと一歩踏み出した彼女の現在地とは!?


  「アメリカン・アイドル」史上最年少という17歳で見事優勝。デビュー作『Jordin Sparks』は本国USだけで100万枚越えを記録し、そこからカットされたシングル“Tattoo”“No Air”も次々と大ヒット。特にクリス・ブラウンとの初々しいデュエットを聴かせた後者は、異例のロングヒットとなったのみならず、グラミー賞でもノミネートされるという快挙を成し遂げた。「本当に信じられなかったわ。夢のまた夢が叶ったという気分だった。特に大好きな“No Air”でノミネートされたというのも嬉しかったわ。初めてあの曲を聴いた時は、あまりにもステキで溜め息が出てしまったほどだった」と振り返るジョーダン・スパークス。セカンド・アルバム『Battlefield』は、その“No Air”のヒットを受けて、当初はもっとアーバン寄りになると言われていたが、実際に蓋を開けると、彼女の得意なバラードやミッドテンポのポップ・チューンが満載。レオナ・ルイスがデビュー作で、ビヨンセが最新作で挑戦した、ビートを効かせたメロウ・ナンバー主体という印象だ。ファースト・シングルにもなった壮大なタイトル曲(その名も〈戦場〉!)は、そのふたりのディーヴァのヒット曲でもペンを執ったライアン・テダー(ワンリパブリック)とランナウェイズが関わっている。

 「“No Air”を連想させるラヴソングでしょ。初めて聴いた時に凄く気に入って、〈ぜひ私に歌わせて!〉ってお願いしていたわ(笑)。それくらい思い入れのある曲だし、どれだけ私がこの曲に恋しているかは、私の歌を聴けばわかってもらえると思う」。

 10代最後の夏を迎えたジョーダン。だが、その年頃の女の子や同世代の女性アーティストの多くとは異なって、恋の駆け引きを歌ったり、セクシュアリティーを強調することもない。むしろ平凡な女の子らしさを謳歌し、「毎晩パーティーに明け暮れたり、セックスやドラッグとかって私にはあまり理解できない」と言い放ってしまうだけの度胸を持っている。シャノンの往年のヒットの大ネタ使いも鮮やかなセカンド・シングル“S.O.S.(Let The Music Play)”は、かつてのリアーナを思わせるクラブ・トラックだが、そこでも〈落ち込んでいる女友達を励ますためにクラブで踊りましょ〉といった優等生ぶりだ。

 「踊り出したくなるようなハッピーな気分に、みんなにもなってほしいの。私はバラードを期待されることが多いけど、こういう違ったイメージの曲にもチャレンジしてみたかったの」。

 しかし、やはり彼女が作中でもっとも気に入っているのはバラード。自身も曲作りで参加した4曲のうちのひとつ“Faith”では、ゴスペルのバックグラウンドを窺わせる歌唱力もふんだんに駆使されている。

 「ツアーやライヴを通して、以前より声量や音域も増したと思うわ。それに曲に込められたメッセージをどう伝えるか、もっと慎重に考えるようになったし。そういう面では前作から成長したなって思うけど、まだ19歳。これからもっともっと学んで成長しなくちゃ」と、とことん謙虚な彼女。強烈な個性を得るまでにはまだ少し時間が掛かりそうだが、その代わりに良い曲を丁寧に健気に歌うことに掛けては、人一倍こだわりと情熱を持ってきた。だからこそ、彼女の曲はこんなにも皆の心に訴えかけ、愛されているのだろう。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年08月19日 18:00

ソース: 『bounce』 313号(2009/8/25)

文/村上 ひさし