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インタビュー

Buju Banton(2)

シングジェイ人気は俺から始まった

 新作では、ヴェテランらしくレゲエ以前のジャマイカ音楽にも敬意を表している。先行シングル“A Little Bit Of Sorry”はスカ好きとして知られるブジュらしいご機嫌なスカ・チューンだし、“Mary”はロックステディとクラシックなソウル・ミュージックの中間にあるメロウな曲。後者について〈ブジュ流のロックステディでしょうか〉と尋ねたら、なぜか大笑いされた。

「ロックステディは(スカが)レゲエに移行していく期間に生まれた、シンパシーを湛えたハードコアな音楽だ。レゲエは生き物と同じで、ロックステディやワンドロップといった要素が絡みながら、常に進化している。全部が繋がっているんだよ」と、レゲエ史の講義みたいな解説してくれたブジュ先生。せっかくなので、〈歌とシングジェイの境がどんどんなくなっている風潮の発端は先生である〉という持論をブジュ本人にぶつけてみた。

「シングジェイ人気の現象は、俺の“Murderer”のヒットから始まったと自負しているよ。日本をツアーしている間、高松で書いた曲なんだけど、あれ以来、ジャマイカではシングジェイは、表現方法のひとつとして定着したと思う。もちろん、全部が俺の功績だとは言わないけどさ。他の人たちも、同じ表現方法でたくさんのスウィートな曲を作っているからね」。

 また、楽器の音色でしか出せない温かさに満ちているのも、『Rasta Got Soul』の特徴だ。

「今回は楽器の音とコンピュータの音を両方うまく合わせて作ってあるんだ。ライヴの感じを出したかったから、可能な限り本物のミュージシャンと作った」。

 音は温かいが、痛烈なメッセージを含む曲もしっかりある。“Lend A Hand”ではどんな状況でもお互いを助け合う大切さを述べ、ワイクリフ・ジョンを招いた“Bedtime Story”では、父親が戦場から帰らない状況を描き、終わらないイラク戦争に対する怒りを滲ませる。

「“Bedtime Story”は、よく聴いてくれればわかる通り、俺がほとんどリードを取っている。というのも、タイムズスクエアを見下ろすスタジオで大体を書き上げたところで、ワイクリフが偶然電話をしてきたんだ。そのまま、彼がスタジオに顔を出してくれて、ベースラインに合わせてギターを弾きながら、ヴォーカルを足してくれたんだよ」。

 最後に、『Rasta Got Soul』から何を感じ取って欲しいか、質問した。

「俺自身より、レゲエの在り方がもっと大事だ。この作品を聴いて、前向きな気分になって、毎日のプレッシャーをはねのける力になれたらいいね」。

 やはり、ブジュ・バントンは〈ソウルフルなラスタ〉なのだ。ジャマイカのアイコンの声を、しっかり受け止めよう。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年04月30日 16:00

更新: 2009年04月30日 18:13

ソース: 『bounce』 309号(2009/4/25)

文/池城 美菜子