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インタビュー

吉井和哉(3)

ヴォルテージが上がってきた!

 「リズム感の合う人がアメリカのミュージシャンに多いんです。もともと僕は〈日本にはない音を出すバンドになろうよ〉って目標を持ってTHE YELLOW MONKEYを始めて、バンドがデビューする時、レニー・クラヴィッツの『Mama Said』を聴いて、〈こういう音にしたい!〉って思ったんです。それでエンジニアに〈こういう音にして〉って言ったら、無理だと。機材とかスタジオの加減もあるからって。いま思えば確かに無理だったんですけど(笑)、その頃から求めていた音があって、それをいま手にできてきたわけです。そういう意味でもこのアルバムは自分の集大成だと思いますね」。

 今回のアルバムは大上段にテーマを掲げたり、作品性の高さをめざしすぎることを嫌う吉井の姿勢が反映されている。「次のアルバムはまたわからないですよ~」とニヤリとするも、現在の彼は決して自分に逆らうことがない。辛酸を舐めてきた40代の男の穏やかな佇まいがそこにある。

「アルバムに入っている“ルビー”。これ、自分のなかでは松田聖子さんとミューズとキーンとジャパメタを合わせたような感じなんですけど(笑)、いまこういう感じの曲は家では聴かないんです。でも曲としては自然に出来ちゃった。自分のなかにあるものが気付かないうちにミックスされて出たんでしょうね。ただ、メランコリック路線もこの曲くらい。いまはそういう面をあまり前に出さなくてもいいんじゃないかって思えるからなんです。BB・キングの映像を観て〈何も哀しい表現をストレートに出さなくてもいいんだ〉ってことに改めて気付いたんですよね。僕はどんなに辛い時でも、自分が書いた曲に勇気付けられた。だからいまは待っていてついてきてくれたファンの方に、ちゃんと太くなって帰ってきました、みたいな気持ちを伝えたい。タイトル(『VOLT』)みたいに〈ヴォルテージが上がってきた!〉って感じです」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年03月26日 17:00

更新: 2009年03月26日 18:35

ソース: 『bounce』 307号(2009/2/25)

文/岡村詩野