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インタビュー

Dizzee Rascal(2)

今回は達成感がある

 そして、テキサスのUGKとマイクを交わす“Where's Da G's”。ひょっとしたらこの組み合わせを意外に思う向きもいるかもしれないが、2005年の時点でバン・B率いるミドルフィンガズとレコーディングを行っているディジーは間もなくリリース予定のUGK『Underground Kingz』やグリット・ボーイズ『Ghetto Reallity In Texas』への参加が決定していたりと、すでにテキサス~ヒューストンのシーン内で確固たる信頼を築き上げている。なお、バン・Bはディジーのフロウを「半分コックニー、半分サウス」と評し、そのスキルについては「奴は息の使い方がすごく上手いんだ」と絶賛していることも付け加えておこう。

「ツアーでよくアメリカに行くんだけど、俺はサウスがいちばん好きなんだよ。特にヒューストンは人間も温かいうえにカルチャーも素晴らしいね。UGKとは現地で何度か会って意気投合したんだ。彼らは俺の兄貴みたいな存在だよ。約束は必ず守るし、プロフェッショナル。本当に出会えて良かった。周囲のリアクションを恐れずにマジなリリックをかましていくUGKの姿勢はすごく勉強になったね。この“Where's Da G's”はグライムなんだけど、テンポがヒップホップ的なんだ」。

 その他にも、ロブ・ベース&DJ E-Zロック“It Takes Two”などにおけるサンプリングで名高いリン・コリンズのクラシック・ブレイク“Think(About It)”を使った“Pussyole(Old Skool)”、ディジーみずからドラムを叩くヘヴィー・デューティーなリード・シングル“Sirens”など、アルバムはダンス・ミュージックの〈Fun〉に最短距離でアプローチしたような痛快な楽曲で埋め尽くされている。以前に「俺はハードコアでもロウでもない。俺はモア(それ以上)なんだ!」と豪語していたディジーの真意は、この最高にスリリングなエンターテイメント大作『Maths+English』を前にすればおのずと浮かび上がってくるだろうし、彼がデビュー当時に授かった〈The Future Of British Hip Hop〉なる触れ込みもここにきていっそう真実味を帯びてきた感がある。

「いままでのアルバムは勢いで作ってきたようなところがあるんだけど、今回はじっくり時間をかけた。曲によっては制作に半年以上かかったものもあるぐらいなんだ。そんなこともあって、このアルバムに関しては過去の2枚で得られなかったような達成感がある。アーティストとしてやらなくちゃいけないことを成し遂げた満足感、次のステップにいけた充実感っていうのかな。それは俺にとって金や名声よりもずっと大事なことなんだ」。

▼『Maths+English』に参加したプロデューサーの関連作品を一部紹介。


フューチャー・カットのトラックも収録したレネゲイド・ハードウェアのレーベル・コンピ『Renegade Hardware Presents Anthology Part II - Originals & Remixes 1995-2005』(Renegade Hardware)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年06月14日 18:00

ソース: 『bounce』 287号(2007/5/25)

文/高橋 芳朗